2009年10月11日日曜日

mainichi shasetsu 20091011

社説:日中韓首脳会談 「共同体」の全体像示せ

 日中韓首脳会談が中国・北京で開かれた。席上、鳩山由紀夫首相が持論の「東アジア共同体」構想を提起し、中国の温家宝首相、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領から好意的な反応を得たという。日本のアジア外交がやっと動き出した。

 この数年間、自民党政権下で日本のアジア外交は影が薄かった。驚異的な経済成長によって大国の地位を確立した中国と、その中国に急接近する米国という二つの風圧にあおられて金縛り状態になっていた。袋小路から抜け出せたのは、政権交代の効果だろう。

 しかし「東アジア共同体」は、鳩山首相の独創ではない。日中韓首脳会談という枠組み自体が、「東アジア共同体」構想の一部として生まれたのであ る。日中韓首脳会談の前身は、1997年にクアラルンプールで開かれた3カ国首脳非公式会合だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)が非公式首脳会議を開い た時に、その場を借りて行ったので貸座敷外交と呼んだ。提唱者は当時の橋本龍太郎首相だった。まだ中国の影響力はそれほど大きくなく、吹き荒れるアジア通 貨危機の対応で日本が指導力を発揮した。

 ASEAN首脳と日中韓3首脳を合わせた枠組みは、10年前のマニラでのASEANプラス3首脳会議で「東アジア協力共同声明」につながった。そ こから「東アジア共同体(EAC)」の論議が生まれ、豪州、ニュージーランド、インドを加えた現在の東アジアサミット(EAS)に発展した。その中で、昨 年からASEANから独立して日中韓の3カ国首脳会談が動き出した。

 「東アジア共同体」構想はすでに存在している。鳩山首相は、これまで小泉純一郎氏など歴代の首相が語ってきた「東アジア共同体」とどこが違うのか、その点をまだよく説明していない。

 米国は東アジア共同体の論議に以前から入っていない。だが、米国がアジア市場から締め出されると警戒していることは間違いない。

 首相は会談で「ややもすると米国に依存しすぎていた」と語ったという。わかりやすいが、日本が反米になったのではないかと神経をとがらせている米国のことも忘れてはならない。思わぬ反発を受けないよう、鳩山流共同体論の全体像を具体的に提示すべきだ。

 中国からは北朝鮮が日朝協議の再開を望んでいるという情報が伝えられた。停滞していた日朝関係が動き出しそうだ。それを前に、日中韓の首脳が連携を示したことは、北朝鮮へのメッセージになった。鳩山首相は、軍事力より外交力がまさることを今後の実績で示してもらいたい。

毎日新聞 2009年10月11日 0時02分




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