社説:95兆円予算要求 ムダ遣い根絶の戦略を
来年度予算は、政権交代の結果、国やくらしがどう変わったか(あるいは変わらなかったか)を国民が最初に実感する予算になる。
その出発点となる各省庁の概算要求が出そろった。総額は95兆円超と過去最大の規模に膨らんだ。
心配が現実になった格好だ。
子ども手当や公立高校の実質無償化など民主党が公約した政策の費用を盛り込むため、増額が懸念されていた。鳩山由紀夫首相が政権公約関連以外の歳 出について、今年度当初予算以下に抑えるよう指示していたが、「無駄を削れ」「不要不急は後回し」の号令だけで歳出を削り込むことにはやはり無理があっ た。鳩山政権による初の予算にどんな特色を持たせるのか、何を基準に政策の優先順位を決めるのか、明確な基本方針や具体的な目標が示されなかったからであ る。
もちろん、査定作業はこれからだ。行政刷新会議の腕の見せどころといってよい。ところが政権の大きな方針作りをする場であるはずの国家戦略局(室)がまだ機能していない。何よりそこが気になる。
概算要求段階で歳出が膨らんだ分、削り込み作業は難航が予想される。早急に戦略室の体制を固めながら、わかりやすい指針を作ることである。大きな 方針、戦略を詰めずに無駄の削減を頑張ろうとしても、結局、財務省頼みの査定になりかねない。政権が掲げる「政治主導」は予算1号から頓挫してしまう。
人気取りの歳出や減税を先行させ、痛みを伴う改革を先送りするようなことにならないよう、責任ある予算編成を行ってもらいたい。
次に気になるのは、早くも赤字国債の増発論が浮上していることだ。赤字国債は次の世代にツケを回すものである。鳩山首相はこれまで赤字国債を増や さないと述べてきたが、税収の落ち込みを理由に増発の可能性に言及した。その後、増発に世論の反対が強いなら公約した政策を見送ることもあり得ると修正し た。
しかし、赤字国債か公約の見直しかという議論ではないはずだ。衆院選中から財源の不安は再三指摘されていたが、民主党は「予算の組み替えや削減で捻出(ねんしゅつ)できる」と説明してきたではないか。「できませんでした」では済まされない話だ。
民主党の政権公約には、一般会計だけでなく特別会計も合わせ「国の総予算を徹底的に効率化。ムダ遣いを根絶」とある。戦略室を司令塔に特会の見直しを急がねばならない。
予算編成が概算要求段階からこれほど注目されたことがあっただろうか。国がよい方向に動き出したと実感できる予算を国民は期待しているのである。
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