社説:「給油」撤収問題 アフガン総合策を示せ
アフガニスタン支援策を探るため同国とパキスタンを訪問した岡田克也外相が、来年1月15日に期限が切れる新テロ対策特措法の延長法案を臨時国会に提出するのは困難との見方を示した。インド洋での給油活動を打ち切り、海上自衛隊を撤収する公算が大きくなったことになる。
鳩山由紀夫首相や岡田外相はこれまで「単純延長はしない」と発言してきた。北沢俊美防衛相が1月撤収を明言する一方、防衛省の長島昭久政務官が先 週、海自派遣に対する国会承認を盛り込んだ法案に修正して給油活動を継続する考えを示すなど混乱したのも、「単純延長せず」の真意が不明だったからであ る。
今回の外相発言は、撤収の方向に一段と踏み込んだものである。しかし、その内容には疑問が残る。来年1月の期限までに延長法案提出が間に合わない というのを理由の一つにしているが、修正法案であっても臨時国会で成立させる意思があれば可能である。政府が現在、検討している臨時国会で審議する法案の 中に給油問題が含まれていないというのは現状の説明にすぎず、外相が給油中止の理由に挙げるのはおかしい。
また、連立相手の社民党が自衛隊の海外派遣に反対していることも理由の一つのようだ。しかし、問題は連立政権で圧倒的多数を占める民主党から政権入りした首相や外相の考えである。これを明らかにしないまま社民党の姿勢にかこつけるのは、あまりに主体性がなさすぎる。
政府に求めたいのは、外相のアフガン訪問を踏まえ、早期に総合的なアフガン支援策をまとめることだ。
日本政府は過去、約20億ドルの人道・復興支援を表明し、すでに約17.9億ドル分を実施している。平野博文官房長官は「農業の再興、民生の支援」を柱とする考えを示し、外相はアフガン訪問時に、反政府勢力タリバンの元兵士への職業訓練を実施することを表明した。
しかし、支援の具体的な全体像にはほど遠い。アフガン国内の急速な治安の悪化が、アフガン本土への要員派遣を困難にし、民生支援の選択の幅を狭めているのが現実である。
毎日新聞は、給油活動もアフガン支援の選択肢の一つであると主張してきた。これをやめる場合は、過去の給油活動を検証し、関係国のニーズ、有効性の低下など中止の積極的な理由を示すと同時に、給油活動に代わる、より効果のある支援策を打ち出さなければならない。
自民党は臨時国会に給油活動延長法案を提出するという。政権を揺さぶる狙いもあるのだろう。論戦のテーマになるのは確実だ。鳩山政権には、これに対抗しうる説得力を持った支援策を提示してもらいたい。
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