2009年10月18日日曜日

mainichi shasetsu 20091018

社説:どうした経団連 勇気を持って変身せよ

 総選挙で民主党が大勝して以来、様変わりしたのは政界、官界だけではない。財界も発想や行動の大転換を求められる。変化を前向きにとらえているか どうか、対照的なのが日本経団連と経済同友会だ。特に、鳩山政権の打ち出した温室効果ガスの排出を90年比25%削減する目標で、両者の言動ははっきり分 かれた。

 経団連は産業界や国民への負担が大きく、経済成長に悪影響を与えるとして難色を示し、「25%削減には米国と中国の参加をお願いしたい」とわかり きった注文をつけた。一方、同友会は新たなビジネスチャンスも生まれると基本的に評価し、達成に向け協力する姿勢を示した。そのうえで、具体的な削減策を 明らかにすることや国民に負担と利益について十分に説明するように環境相に求めている。

 民意が誕生させた鳩山政権に従えと言っているのではない。社会を構成する重い存在として、企業経営の論理一辺倒でなく、国と国民の利益を考えた発言、行動を期待したいのだ。だが、経団連は自らの立ち位置や将来の方向性を見いだせず、ただ戸惑っているように映る。

 25%削減問題では、影響が大きい鉄鋼や電力などに厳しい目標なのは理解できる。しかし、低炭素を売り物にした商品開発に活路を求め、商機の拡大 を期待する企業も多い。経団連は、日本鉄鋼連盟や電気事業連合会ではないはずだ。また、70年代に米国で猛反発を浴びた自動車の排ガス規制強化策「マス キー法」が、日本の自動車産業の技術力を飛躍的に向上させるきっかけになったことも忘れてはならない。

 経団連は「自由主義経済の堅持」という旗印を掲げてきた。冷戦終結後は、長い経済低迷もあって、産業の国際競争力を高める政策の実現に力を注い だ。04年以降は、「口を出すが金も出す」と政治献金を再開し、自民党には毎年22億〜29億円を「社会貢献」の名目で提供してきた。その結果、労働者派 遣法改正などにこぎつけたものの、それで企業の競争力は本当に上がったのだろうか。国民の生活は良くなったのか。自民党は献金を使って政策の立案、遂行能 力を向上させたのだろうか。

 将来的な企業・団体献金の禁止を民主党が掲げる中、経団連は先手を打って献金をやめるべきだ。政治的には中立で、企業の利益ではなく国と国民の利 益のための政策提言機関に生まれ変わるのも一つの方向である。「民僚」と呼ばれる優秀な職員を、時の政権のスタッフに活用する道も開ける。

 国民の多くは今の経団連に存在意義を感じていないだろう。経団連は勇気を持って変わってほしい。

毎日新聞 2009年10月18日 0時07分



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