社説:鳩山政権1カ月 変化は実感、さて次は
まずは順調な滑り出しといっていいだろう。鳩山政権が発足して15日で1カ月となった。
鳩山由紀夫首相が就任早々、国連で表明した「温室効果ガスを2020年までに90年比で25%削減する」との方針や非核三原則堅持に関する発言、 あるいは八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の建設中止方針、そして閣僚と副大臣、政務官の「政務三役」が前面に出て各省庁の意思決定をするスタイ ル……。
政権が交代するとこのように変わるのかと日々、実感している人も多いはずだ。高い内閣支持率を維持しているのもうなずける。
ただ、同時に鳩山政権が早急に手をつけるべき課題は何かが見えてきた1カ月でもあった。
この間、首相が存在感を示したのは主に外交面だ。一連の国連演説のほか、米、露、中、韓などの首脳と矢継ぎ早に会談をこなし、一定の成果を上げた。外務省に頼らぬ外交を岡田克也外相と二人三脚で進めようと模索している点も評価したい。
それに比べて印象が薄いのが内政だ。前原誠司国土交通相や亀井静香金融・郵政担当相らが注目を集めるばかりで首相自身が判断を下す場面はほとんど ない。今年度補正予算の見直しも来年度予算の概算要求も各閣僚にお任せしているのが実態で、閣僚の中には「省益優先」の姿勢さえ散見され始めている。
「官邸主導で縦割り行政を排する」とのうたい文句はどこへ行ったのか。限られた財源の中、民主党がマニフェストに掲げた政策のうち、どれを優先す るのか、旧政権の政策のどれを見直すのか、明確な基準を首相や官邸が示さず、閣僚に任せるばかりでは、その作業にはおのずと限界がある。
なぜ、鳩山首相が指導力を発揮する場面が少ないのか。改めて懸念するのは首相直属で総合調整をはかるはずだった「国家戦略局」の姿が依然、見えないことだ。
平野博文官房長官は戦略局の設置法案を次の臨時国会に提出せず、来年の通常国会に先送りする考えを崩していない。そうしている間、現実には菅直人 副総理が担当する戦略局は一体何をするのか、一層、不明になってきている。結果、予算編成作業は従来通り、財務省主導になっているとの指摘もある。これで は目指した方向とはまるで違う。
「急がば回れ」だ。安全運転を目指して臨時国会は法案の数を減らすという消極姿勢はやめて、まず仕組み作りを急ぐべきだ。政治主導を進めるためには副大臣や政務官が足りないことも明らかだ。人数を増やす法整備も臨時国会で処理すべきだろう。それが体制固めにつながる。
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