2009年10月22日木曜日

asahi shohyo 書評

地頭を鍛えるフェルミ推定ノート [著]東大ケーススタディ研究会

[掲載]2009年10月18日

  • [評者]勝見明(ジャーナリスト)

■直感で仮定→概算して検証

 最近話題の「フェルミ推定」と「東大生」のマッチング。いかにも売れ筋ねらいで、実際、各書店でベストセラー入りしている。

 フェルミ推定とは「日本に猫は何匹いるか」といった、見当がつかない問いを今ある知識だけで短時間で概算する方法。ロジックの 通し方が問われる。「日本全国のゴミ箱の数」「割り箸(ばし)の年間消費数」等々、全30問に経営コンサルタント志望の東大生が挑み、解き方の型にあては めて計算。数字の現実性を検証する趣向だ。

 面接試験対策のため、サークル活動として1000問以上解いた成果で難問を次々こなす解答ぶり。さすが東大生。ロジックはこう 立てるのかと感心するが、それだけでは読みが浅そうだ。本書のミソは「いい線」の解だけでなく「外れ」も正直に載せていることだ。ロジックが重要で現実と の適合性はあまり問われないからだ。

 なぜ、外れるのか。日本全国の猫の数は「日本の世帯数×所有率×1世帯あたりの平均所有数」で解く。所有率や平均所有数は「実 感ベース」、つまり、直感で仮定をするのだが、ときどき「ん?」と思える仮定が登場する。計算式は練習すれば習得できるが、直感は日常的な経験で磨かれ る。

 「地頭力」はロジックに加え、現場での直接経験により鍛えられることを著者らは巧まずして示していると、深読みできた読者は地頭力に自信を持ってよいだろう。

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