2009年10月23日金曜日

mainichi shasetsu 20091023

社説:「普天間」移設 政権の意思が見えない

 来日したゲーツ米国防長官と鳩山由紀夫首相、岡田克也外相、北沢俊美防衛相の会談の中心テーマは、米軍再編にかかわる普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題だった。

 ゲーツ長官は、ビジネスライクに物事を進める人物らしい。会合は30分以内、他国訪問時に恒例となっている儀仗(ぎじょう)も辞退することが多いという。今回の一連の会談や記者会見でも物言いは率直だった。

 普天間移設では、(1)日米合意のキャンプ・シュワブ沿岸部(沖縄県名護市)への移設計画が最良の案であり、沖縄県が主張する沖合に移動する案は 許容範囲である(2)普天間移設がなければ海兵隊のグアム移転もなく、沖縄の兵員縮小もない(3)計画はできるだけ早く進展させる必要がある−−という主 張だった。この考えが米政府の責任者から日本政府に正式に伝えられたことで、移設問題は新たな局面に入ったと言える。

 ゲーツ長官の「強いメッセージ」(北沢防衛相)に対し、日本側には明確な回答がまだない。会談では、政権交代や総選挙による沖縄県の政治環境の変化と、現行計画が決まった経緯の検証を進めていることを説明するにとどまった。もう少し時間がほしいということなのだろう。

 移設先の選択肢は、大別して(1)民主党の本来の主張である沖縄県外・国外(2)米空軍の嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)への統合をはじめとす る沖縄県内(3)日米合意案かその修正−−の3通りである。(1)は米政府との交渉が困難を極めるほか、県外なら移転先の自治体、住民の説得も必要とな る。(2)も米政府の説得と移転先の合意がネックとなる。(3)なら民主党の方針転換と連立相手の社民党の説得が必要である。

 いずれも高いハードルが待ち受ける。が、方針の決定を先延ばしすれば、それだけ住宅密集地にある普天間飛行場の周辺住民の安全・騒音問題が放置されることになる。政府が進める検証作業を踏まえ、最終的には鳩山首相が決断するしかない。

 ゲーツ長官は岡田外相との会談で11月12日のオバマ大統領来日までに日本側の方針を決めるよう求めた。政府方針決定の時期については、政権内の 考えもばらばらだ。北沢防衛相が早期決着に意欲を示し、岡田外相が来年度予算編成を念頭に年内決定を主張しているのに対し、鳩山首相は来年半ばの決着に言 及した。

 首相は来年1月末の名護市長選の結果を見極めたいという意向のようだが、それが移設問題の打開につながるとは考えにくい。沖縄県の仲井真弘多知事も政府方針の早期決定を求めている。首相はまず、政権の方針を決める段取りと時期について政権内の意思一致を図るべきである。

毎日新聞 2009年10月23日 0時07分



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