全面朱塗りの石室出土 大王の墓?奈良・桜井茶臼山古墳
60年ぶりの再調査で、赤い竪穴式石室が出土した桜井茶臼山古墳=22日、奈良県桜井市外山、荒元忠彦撮影
保存されている木棺=22日、奈良県橿原市の橿原考古学研究所、荒元忠彦撮影
桜井茶臼山古墳の石室。壁は板岩が積み重ねられている=22日、奈良県桜井市外山、荒元忠彦撮影
大和政権初期の大王の墓の可能性がある奈良県桜井市の大型前方後円墳、桜井茶臼山古墳(3世紀末〜4世紀初め、国史跡、全長200メートル)で、全面に 朱が塗られた大型の竪穴式石室と木棺が確認された。県立橿原考古学研究所(同県橿原市)が22日発表した。古墳時代前期の竪穴式石室、木棺としては最大 級。塗料には、貴重品だった顔料「水銀朱」が少なくとも200キロ使われたとみられ、過去最大量の出土例という。
同時期のほとんどの大型前方後円墳は陵墓(皇族の墓)や陵墓参考地で立ち入りが禁じられており、墳丘中心部の調査は極めて珍しい。謎に包まれた大王級の墓の実体を解明する重要な手がかりになる。
石室と木棺は、橿考研の1949年の調査で出土したが、当時は一部の研究者が確認しただけで公開されていなかった。
橿考研によると、石室は長さ約6.75メートル、幅1.27メートル、高さ1.71メートル。周囲に数千枚の板石(最大長1メートル、幅80セン チ、厚さ12センチ)を垂直に積み上げて内部に空間をつくり、計12枚の天井石(最大長2.75メートル、幅76センチ、厚さ27センチ)でふたをしてい た。木棺は長さ4.89メートル、厚さ27センチ。丸太をくりぬいた形で遺物やふたはなかった。木棺は石室から搬出し、橿考研で保存処理している。石室内 からは、被葬者の権力を推定するのに役立つ銅鏡片なども多数出土しており、整理を進めている。(渡義人)
〈桜井茶臼山古墳〉 柄鏡(えかがみ)形の大型前方後円墳で、被葬者は不明。天皇や皇族の墓とする資料などがないため、この規模の古墳では珍しく 陵墓に指定されていない。王権のシンボルとみられる碧玉(へきぎょく)製の玉杖(ぎょくじょう)や約20面の銅鏡など多数の副葬品が見つかっている。周辺 には、卑弥呼の墓との説がある箸墓(はしはか)古墳(桜井市)や、景行天皇陵とされる渋谷向山古墳(天理市)など、古墳時代前期の大型古墳が集中する。
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