社説:モーターショー 環境技術をさらに磨け
「クルマを楽しむ、地球と楽しむ」をテーマに千葉市の幕張メッセで第41回東京モーターショーが来月4日まで開かれている。
海外の主要メーカーがそろって参加せず、会期は前回07年より4日短い12日間となった。背景として、昨秋のリーマン・ショック以来の業界への逆 風があるが、自動車の現在と未来をPRする場としての日本市場の地盤沈下も否めない。独フランクフルト、米デトロイトと並ぶ世界の3大モーターショーとい う位置づけは、大市場を持つ中国の勢いに押され気味だ。今年4月の上海国際モーターショーには、今回参加しなかった欧米の主要メーカーや韓国・現代自動車 も出展した。
ショーの色彩も性能やデザインの斬新さを競い合うかつての「夢」中心から、実用と市場性を重視した技術を見せる「現実」主体に変わった。キーワードは「環境」だ。
トヨタが次世代のハイブリッド車として、家庭で充電できるプラグインハイブリッドの「プリウス」を国内で初めて展示し、ホンダも来年2月発売のス ポーツタイプのハイブリッド車を紹介した。また、日産自動車は、来秋投入する電気自動車の「リーフ」を披露した。ゴーン社長は「低燃費車やハイブリッドで は、環境問題の解決にならない。『排出ガスゼロ』こそ目標だ」と意気込んだ。7月に世界初の量産電気自動車「i−MiEV(アイミーブ)」を発売した三菱 自動車は、生活に電気自動車を自然に根付かせるという考えを提示している。
しかし、実用に的を絞ったことが課題も浮き上がらせた。トヨタのプラグインハイブリッド車は、3時間かけて満充電し、電気で走れる距離は20キ ロ。日産の電気自動車の走行可能距離もデータ上は160キロ、実走行では100キロ程度とみられている。いずれも電池などのために車重は、低燃費の小型車 より5割程度重い1.5トン以上になりそうだ。体重数十キロの人間を運ぶ道具としては大がかりすぎ、「環境に配慮した」と胸を張るのは気が引ける。それだ け資源もたくさん消費しているわけで、走行中の環境負荷を減らそうとすると、製造段階での環境への影響が増大するという問題は悩ましい。
もっともコンパクト化や軽量化は日本で培われた技術が生きる場で、日本のメーカーの未来が広がる分野だ。発展途上の自動車の環境対応をリードして いくのは日本だという事実は、市場としての重みが揺らいでも変わらない。環境技術とそこに込めた考え方を世界に発信することで、東京モーターショーの新た な存在感を構築して、世界の注目を集めてほしい。
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