社説:参院補欠選挙 自民の埋没は深刻だ
やはり勢いの差が出た。鳩山内閣発足後、初の国政選挙である参院神奈川、静岡両補欠選挙が25日投開票された。いずれも民主党の新人候補が自民党候補らを制し、参院で与野党勢力が拮抗(きっこう)する中で、貴重な2議席を獲得した。
発足から約40日の間にさまざまな新機軸を打ち出した鳩山内閣だが、政治の変化への期待が依然として強いことを裏付ける選挙結果であり、政権運営 に弾みがつこう。一方で、谷垣禎一総裁が初戦で敗北を喫した自民党は精彩を欠き、存在感が急速に埋没している。反転攻勢の足がかりを得るためには、政策の 軸足を鮮明にすべきである。
衆院選から間もない補欠選挙だったが、各党とも懸命にテコ入れをした。民主党にとって新政権の滑り出しへの評価を測る指標となるうえ、来夏の参院 選で衆参両院の単独過半数確保を実現できるかの試金石となったためだ。野党に転落した自民党も、衆院選惨敗から立ち直るきっかけをつかみたかったはずだ。
ふたを開ければ、民主党の2勝だった。鳩山由紀夫首相の政治資金問題や、官僚OBの斎藤次郎元大蔵次官を「日本郵政」社長とする人事の影響などを 懸念する声も党内にあったが、追い風は続いていた。政権発足1カ月を経ての毎日新聞の世論調査でも内閣支持率は72%に達し、支持する人の8割近くは「政 治のあり方が変わりそうだから」を理由にあげている。国民の信頼を裏切らぬためには「脱・官僚」による政治主導の実現という、初志を忘れぬことが肝心だ。
対照的なのは自民党だ。両補選で敗北した結果以上に深刻なのは、谷垣氏らの発言から党再生への明確な展望が示されないことだ。
たとえば、政府が建設中止方針を打ち出した群馬「八ッ場(やんば)ダム」を視察した谷垣氏は前原誠司国土交通相の手法を強く批判した。だが、中止か推進かの見解がはっきりしないのでは何とも迫力に欠ける。
巨額の財政赤字、米軍再編と沖縄の負担軽減、公共事業見直しなど、新内閣が取り組む多くの課題は自民党政権が長年放置した問題の後始末でもある。鳩山内閣の対応を批判するばかりでは、地に落ちた国民の信頼回復は難しい。
頼みの組織票も揺らぐ。日本医師連盟は自民党一党支持の白紙撤回を決めた。今回の補選では公明党も推薦を見送るなど、来夏参院選に向けた立て直しは容易でない。
党内のあつれき覚悟で政策の対立軸を打ち出す強さが、谷垣氏には必要だ。このままでは政権奪還どころか、民主党の一強状態に拍車がかかるばかりではないか。
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