2009年10月28日水曜日

asahi shohyo 書評

四十日と四十夜のメルヘン [著]青木淳悟

[掲載]週刊朝日2009年10月30日号

  • [評者]温水ゆかり

■著者と解説者のイタチごっこ?

  面白い。"ああ、やってる"という感じで。現代文学では、分かりやすいプロットは忌避される。表題作は4日間の「わたし」の日記(日常)を解体、時系列を バラしてコラージュする。連結イメージは"紙片"。チラシ配りのバイト、自宅アパートに投げ込まれるチラシ、チラシの裏に創作する「メルヘン」。その小説 内小説でも大量のチラシが舞う。

 本書は解説(保坂和志氏)が前代未聞。氏は新潮新人賞選考時、これは米国の作家、ピンチョンだと大興奮。4人の反対を1人で押 し切った。この解説を書くにあたってゲラは嫌いだとし、受賞作を改変した単行本の内容に沿って書き進める。が、なんと文庫版にも改変が。結果意味不明の箇 所が残る解説に。しかし、これはこれ。本の形が変わった時、そこでも処女作いじりを続ける著者と保坂氏がイタチごっこを繰り広げているんじゃないかと想像 するのも、また愉し。

"才気"の表題作、先史と未来が一気通貫になる"才能"のもう1編。今年の新作といい、大器、順調に育ってます。

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