2009年10月19日月曜日

mainichi shasetsu 20091019

社説:五輪競技 藍ちゃん遼君の出番だ

 国際オリンピック委員会(IOC)はリオデジャネイロでの開催が決まった2016年夏季五輪から7人制ラグビーとゴルフの2競技を加えることを決めた。

 選考の経過を振り返ると、ジャック・ロゲIOC会長の意向が強く反映したように思われる。従来、五輪競技の採用はそれぞれの競技について総会で投 票にはかり、3分の2の賛成が必要だった。だが、今回は五輪憲章の規定を改正し、まず理事会で候補を2競技に絞り、総会の過半数で承認を得ることにした。

 15人の理事会メンバーのうち、欧州の理事はベルギー出身でラグビー選手だったロゲ会長を含め7人と多数派を占める。結果的に米国生まれの野球と ソフトボールに代わり、英国発祥の2競技が加わった。五輪が商業化へ大きくかじを切った84年ロサンゼルス五輪以降、米国主導で進んだ五輪の流れを再び欧 州主導に戻した印象が強い。

 日本のメダル有望競技だった野球とソフトボールの五輪復帰への道がまた遠のいたのは残念だが、幸い日本は今、ラグビーとゴルフの五輪加入を歓迎する環境にある。

 ラグビーは日本協会の悲願だった19年のワールドカップ(W杯)日本開催が決まったばかりだ。ホスト国として、低迷していた国内でのラグビー人気 の盛り上げは大きな課題の一つだった。W杯での15人制と五輪での7人制の違いはあっても、ラグビーに対する国民の関心を高める上で追い風になりそうだ。

 現状では15人制も7人制も世界の強豪国との力の差が大きい。日本協会はさらなる強化策を練り直す必要がある。とりわけ国内の競技人口が1000人ほどしかいないといわれる女子は、指導者の育成や大会の拡充など課題が山積している。

 ゴルフは米国や欧州のプロツアーの繁栄がIOCには魅力だったのだろう。幸い日本でも女子の宮里藍選手、男子の石川遼選手の出現以来、将来性豊かな若い選手が次々と台頭してきた。7年後の五輪で世界の強豪選手と互角に戦ってくれそうな期待が高まっている。

 国内では「金持ちのスポーツ」という印象が強いゴルフだが、五輪への復帰を機に、若者からお年寄りまで多くの人に親しまれ、支持されるスポーツへと進化することが望まれる。

 試合終了の笛が鳴ると、敵味方の別なく互いの健闘をたたえ合う「ノーサイドの精神」がラグビーのすばらしさだ。また、ゴルフはルールブックの第1章に「マナー」を規定したスポーツである。

 両競技の美風が、さまざまな課題を抱えている現在の五輪にプラスの効果を生むことを期待したい。

毎日新聞 2009年10月19日 0時25分



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