定時制、定員超過で不合格者急増 不況で公立人気
今年度の公立高校入試で夜間定時制(単位制含む)の最終的な不合格者(志願者から合格者を引いた数)が、全国で計1174人に上り、増加傾向をたどって いることが朝日新聞社の調査でわかった。このうち、「定員超過」が理由の不合格者は416人で、前年度比1.5倍だった。不況の影響などで公立志向が強ま り、「教育の安全網」として定着してきた夜間定時制からはじき出される層が広がりつつある。
調査は、一般入試のほか、定員割れがあった夜間定時制の2次募集や追加募集を含め、中卒生が進学できる「最後の機会」での不合格者数(当日欠席者 を含む)を各都道府県教委に聞いた。対象者は05年度1098人、06年度1007人、07年度1005人と減少傾向にあったが、08年度は1222人で 一転して急増。今年度は若干減ったものの、高水準を維持していた。最終試験の志願者数でみると、今年度は4892人で、08年度より108人増えている。
不合格者数は都道府県によって大きく異なり、北海道、山形、熊本がゼロだったのに対し、愛知(157人)、福岡(100人)、京都(78人)の多さが目 立った。各教委の方針が(1)定員内であれば原則、全員を入学させる(2)定員内でも学力や学習意欲に問題があれば入学させない、に分かれていることも影 響している。
「原則入学」の措置を取っている都道府県でも、定員超過による不合格者が続出した。2次募集で不合格者167人を出した大阪は4月以降、学校ごと に補欠募集を実施。それでも定員超過で29人が入学できなかった。定員内であればなるべく入学させる方針の愛知の場合、不合格者数は前年度の2.6倍に 上った。
最終試験で不合格になり、行き場をなくした生徒について追跡調査を実施していたのは、新潟、徳島、宮崎の3県のみ。全国で定時制の統廃合が進む中、高知、熊本、沖縄の3県がすでに再編・統合を理由に減員を決めていた。
文部科学省の学校基本調査(速報)によると、公私合わせた定時制の今年度入学者数は3万7083人。過去10年で最高だった。逆に全日制の入学者数は 109万3027人で、10年間では最低。経済的事情や不登校などを抱えた生徒が、全日制よりも規則が緩い定時制を選ぶ傾向が高まっている、との指摘もあ る。
一方、全日制で不合格になった生徒が学費の高い私学を敬遠し、定時制に流れ込む傾向も顕著だ。その結果、定員割れ状態が続いていた定時制の競争率が上がり、不合格者が増える要因となっている。(中塚久美子)
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