2009年10月25日日曜日

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農家アンケート結果 山田農水副大臣に聞く

2009年10月25日0時1分

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写真:インタビューに答える山田正彦農水副大臣=21日午後、東京・永田町の農林水産省、福岡亜純撮影インタビューに答える山田正彦農水副大臣=21日午後、東京・永田町の農林水産省、福岡亜純撮影

 アンケート結果について山田農水副大臣に聞いた。

 ――「農協は政治にまったく関与すべきでない」と3割の農家が答えました。

 「ああ、やっぱり農民はそう思っていたのかな、と。民主党はこれまで農協に、自民党一辺倒はおかしい、と政治的中立を求め、法改正を主張してきた。農家の方々もその趣旨をわかってもらえたんじゃないかと思う」

 ――JA全中(全国農業協同組合中央会)は先日の大会で、自民支持から「全方位外交」に転換しました。

 「どうなんでしょうねえ。自民党が野党になったから全方位というのは、ストンと落ちる感じはしませんね。本来協同組合なんだから、そこにはいろんな人がいる。まず、全中、農協自身が変わらなくてはならない」

 ――これまで農協が関与してきた補助金を直接支払いに代えるという民主党の方式も半数以上が評価しました。

 「ヨーロッパの国々も米国もそうであるように、直接支払いは当然なんですよ。これまで日本の農家は、自分が作った作物がいくら経費がかかって、いくらで 売れたかと言うことをほとんど知らされてこなかった。経理そのものが農家にとって不明確だった。米の代金や肥料代はいくらだったか、自分で掌握できなけれ ば自立できませんよね。そういう意味で直接支払いは必要なんです」

 「補助金も助成金も農協をはじめ団体を通じて出されてきた。団体を通じるのはやめて、直接国の責任で支払う。農家の皆さんは自立してください、というのが所得補償です。小さな補助金をいくつも出すのに代えて、無担保無保証の融資制度も新設します」

 ――農協を通じた補助金は不透明な部分もありました。すべて公開して国民の議論の材料にする考えは?

「情報公開を求めたことがあるんです。手数料収入はいくらか、実際農家の手元には助成金がいくら行っているのか。明らかにしてくれ、と。今後、政府 が公開を迫ると言うより、全中、農協自らが明らかにして、変わらなけりゃいけない。農民のための組織なんだから。会計帳簿の閲覧を伝票に至るまで求めたこ ともあった。実現しなかったが。農協法にはないが、透明性を図ることは農協の改革にとって大事なことだ」

 ――自民党政権下で農政を支配してきた農林族・農協・農林省の「鉄の三角形」は崩壊するのでしょうか。

 「このアイアントライアングルは、われわれが政権を取ることによって、なくなった。農協や官僚と密着した関係で農政をやるのでなく、農民のために やる。農協は農民のための組織ですから。われわれは農協ではなく、実際に農業をやっている生産現場から、消費者サイドからも直接いろんな声をお受けした い」

 ――農協はどう改革すればいいと考えますか。

 「原点に返るべきだ。もともとの発想が協同組合で、みなさんで助け合ってやっていこうと。自然発生的に農家が集まって、共同仕入れから始まって、 共同販売、借り入れから、信用事業まで。我々が言う6次産業、自分で生産も加工品も作ろうとする動きが各地域で始まっている。農家の産直だけで1万 3000件くらいある。農協はそうした方々と密接な連携をして、ノウハウを生かしていく。合併で大きくなればいいとは思いません。商社のようになるのは疑 問だ」

 ――農協は分割して、ひとつの地域で競争させたらどうか、という提案もあります。

 「それもひとつだ。ひとつの農協の組合長と関係が良くないとお金を貸してくれないこともある。別のところから借りるとか。農協とは限らず、信用組合、信用金庫などから借り入れしたり。所得補償をそうした機関に振り込めば、ずいぶん変わると思う」

――戸別所得補償制度がよくわからないという意見が9割ありました。

 「今までたくさんの補助金があり、農家の方も農水省の役人でも全部わかっている人はいなかったと思う。農業所得補償はいかにシンプルにするか、使いやすくするか、に腐心して組み立てている。モデル事業を来年からやるのでそのプロセスの中でわかっていただけると思います」

 「一言で言って、国が責任を持って農家や漁家が、農業や漁業を続けていけるようにする。どうしても農・漁業は、天災で大きく左右される。自助努力ではど うにもならない部分がある。それは国が責任を持たなければならない。そうしないと、農業の持つ多面的機能、食の安全、食糧安全保障が失われる。今の日本は それが失われつつあるんですよ。先進国の所得補償制度は絶対必要だ」

 ――所得補償は入り口。その先の将来像がわからなくて不安だという声が多い。

 「40%の食糧自給率を維持してきたのは兼業農家だ。お母ちゃんがスーパーのレジに行ったりお父ちゃんがタクシーの運転手したり。なんとか農業を 守ってきた。それが、コメをはじめとする自給率40%を維持してきた。だから小規模農家を大事にしていかなければいけないので、小規模も大規模も同じよう に所得補償をやっていく」

 ――小規模農家をこのまま残したんじゃ、合理化にならないという意見もある。

 「あれは間違いだ。合理化は土地を集約化して機械化することだと思っているが、米国は一戸当たり197ヘクタール耕しているが、それでも農家所得の 30%は助成金をもらい、欧州でも平均60ヘクタールは耕しているが、70%は所得補償でまかなわれている。いくら合理化しても、日本では海外の競争力に 勝てるわけがない。先祖から受け継いできたりっぱな棚田などを大事にして、食糧自給率を維持してきたのは兼業農家だ。65歳以上のお年寄りが61%で、あ と10年もしたら担い手がいなくなる。かといって、いくら規模拡大しても、国際的な市場価格からすれば、採算はとれない。5ヘクタールでも10ヘクタール でも所得補償をして農業を継続する。農業の持つ多面的機能に対して国が所得補償をする。スイスの場合、標高3000メートル以上の農家では牛を飼っている だけで年間530万円所得補償がもらえる。これに対して国民の理解もできている」

 ――アンケートでは「所得補償に消費者の理解が得られない」と考えている農家も半数以上いました。

 「所得補償に国民の50%が賛成しているとの調査もある。最近は消費者も理解していただけるようになった。世界は食糧危機を必ず迎える。その時自 給率が40%しかないとなるとどういうことになるか。食の安全の面もある。遺伝子組み換えのトウモロコシ、大豆、コメには疑問がある。国産のコメ、大豆、 麦を大切にしたい」

 ――財源の問題もある。いつまで続くのか。選挙中から批判があった通り、やはりばらまきじゃないか。小規模農家までやるのは、生活保護に近いんじゃないか。

 「それは違う。ばらまきじゃない。食の安全と食糧自給率、食糧安全保障は国の防衛と同じだ。そこにお金を投じることは、国民、消費者にとっても大切なことです」

 ――所得補償は減反選択制が前提ですね。

 「選択制という言い方はしていない。できるだけみなさんに自由に参加してもらうという点では選択制と言えるかも知れないが。コメ作りは恒常的に生産費が 販売額を上回っている。小規模のコメ農家はみんな赤字だ。赤字だけど作り続けるのは、先祖からの田畑を荒らすわけに行かないから。人に頼んでも何とか作ら なくちゃならない。そういう思いでやってきた」

 「最終的には減反は廃止する。ただ、若い人もコメを食べなくなり、主食用のコメはだぶついてますから、飼料用の米とか米粉とか、麦や大豆を水田で 作る。これに思い切って所得補償をする。主食米よりもそちらを作った方が有利になる助成金制度を打ち出した。飼料米は養鶏、養豚をはじめ飛躍的に需要があ がっていく。今までトウモロコシを米国から買っていたのを地元の農家から飼料米を買うようになる」

 「大規模化を必ずしも目指すわけではないが、米でも飼料米でも面積に対して支払いされるから、規模を拡大するほど利益が出る。耕作放棄地や遊休地に若い人が参入してどんどんそれらの農地を利用すれば、集約化が進んでいくと思う」

 ――米価は下がっても維持しないんですね。

 「生産コストよりも販売価格が下がった場合には、所得補償する。今度の民主党案では、コメ作りは恒常的な赤字だから、生産費はこれ以上下がらない という岩盤部分を設定して、原則定額補償するが、それでもなお、岩盤部分を切って下がった場合には補填(ほてん)しようと考えている。農家が安心してコメ 作りをできるようにしたい。農家にとっても、おいしいコメを作れば高く売れるし、収量を多くすれば利益につながる。市場原理が働いている」

 ――世界貿易機関(WTO)は来年中の妥結を目指している。どう対応するか。

 「海外との生産コストの差額をきちんと補償できる所得補償制度のの整備を急ぐ。それができないうちは認めない。1兆4000億円は少なくともかか る。(参院選にらみと)いわれるが、WTOがいつどうなるかわからないから、所得補償のモデル事業を急いでいる」(聞き手=編集委員・菅沼栄一郎、安川嘉 泰)




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