2009年10月29日木曜日

mainichi shasetsu 20091029

社説:護衛艦衝突事故 「難所」安全策は万全か

 関門海峡で27日夜、西に向かっていた海上自衛隊の護衛艦「くらま」と、東進中の韓国船籍のコンテナ船「カリナスター」が衝突した。火柱が上が り、両船の船首部分が大破したが、くらまの6人の軽傷にとどまったのは不幸中の幸いだった。第7管区海上保安本部が現場検証しているが、政府と海保に求め たいのは、原因と回避行動の徹底究明、難所とされる海域の航行対策である。

 現場となった関門海峡の「早鞆(はやとも)の瀬戸」は、大きく湾曲して見通しが悪いうえ、可航幅が約500メートルしかなく潮流も強い、国内有数の「航海の難所」である。ここを1日約600隻もの船舶が往来し、年平均19.4隻が関係する事故が起きている。

 今回の事故では、互いに右側を航行するルールとなっている現場で、コンテナ船が前方の船を追い越そうとして左側にふくらみ、くらまの針路に進入し た可能性が高い。左側の追い越しは、関門海峡を管轄する海保の管制室の助言だった。海保は、乗組員の聴取や、双方の船舶自動識別装置による航跡・速度の解 析などによる究明のほか、管制内容が妥当だったかどうかも調査すべきだ。

 また、双方の回避措置が妥当であったかどうかも焦点だ。北沢俊美防衛相は、くらまは通常、夜間には総員の3分の1で見張りをするが、狭水道であることから全員配置とし、衝突の危険を察知した艦長が停止のための逆進をかけたが間に合わなかったと説明している。

 防衛省は、昨年2月のイージス艦「あたご」と漁船の衝突事故を受けて、報告・通報を含む見張り能力の向上、指揮の徹底をはじめとする再発防止策を 打ち出した。防衛相への報告は、あたご事故で1時間半かかったが、鳩山政権発足後初の「有事」となった今回は14分後だった。この点では大幅に改善した。 しかし、見張りの実態や、あたご事故で問題となった回避行動の実情については詳しい調査が必要である。

 さらに、難所での航行規則の見直しについて指摘しておきたい。

 「早鞆の瀬戸」では、04年12月、西向きの強い潮流を受けながら東進していた貨物船が、前を行く油送船を追い越そうとして衝突した事故が起き た。また、05年4月には、東向きの潮流のなかで西進していた貨物船が油送船に追い越しをかけた時、東進する船舶を避けようとして油送船に衝突する事故が 発生している。

 関門海峡は、中国や韓国など東アジアの海の玄関口であり、外国船の航行も多い。航路拡幅などで安全性は向上しているとはいえ、海上交通の要衝が難所である実態は変わりない。「追い越し」を含め航行規則の再検討も必要ではないだろうか。

毎日新聞 2009年10月29日 0時04分

 


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