余録:ハロウィーン
「トリック・オア・トリート」は、米国などのハロウィーンでお化けの仮装をした子供たちがお菓子をもらいに近所の家々を回る時にはやし立てる言葉 だ。「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ」という意味である▲もともとケルト人の収穫祭とキリスト教の万聖節の前夜祭が結びつき10月31日の行事と なったハロウィーンだ。だが昨今、日本でもこの季節はオレンジと黒のハロウィーンカラーや、ジャックランタンというお化けカボチャが街にあふれる▲とくに お菓子業界はバレンタインデー、クリスマスに続く「第3の商戦」として盛り上げに懸命という。定番人気商品のハロウィーンパッケージなども目立ち、最近2 年間でこの時期のお菓子市場は4倍に広がったという声も聞こえてくる▲外国の行事に便乗したお菓子商戦は、今や日本人のお家芸だ。しかし昔の日本にもハロ ウィーンのような行事はあった。たとえばひな祭りに子供らが集団でお供えの餅やあられをもらい歩く「ヒナアラシ」という風習が行われた地方もある▲「おひ な荒らしに参じた」とはその時の子供らのはやし言葉だ。東海地方では「ガンドーチ」というが、「ガンドー」は強盗のことというからすごい。十五夜のお月見 に子供らがお供えの団子を盗んで回る「団子盗み」の風習もあった(神崎宣武著「『まつり』の食文化」角川選書)▲お供えを持ち去られた家には福がもたらさ れる−−子供は神様と同じだと人々は考えたのだ。地域のぬくもりの中で子供たちが育てられたころの話である。今年のハロウィーン、子供たちにお菓子を買っ てあげる時には、そんなやさしいご先祖たちも思い起こしたい。
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