2009年5月30日土曜日

asahi archeology history japan Hashihaka Kofun Himiko Nara

奈良・箸墓古墳築造、卑弥呼の死亡時期と合致 歴博測定

2009年5月29日3時5分

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写真:卑弥呼の墓との説がある箸墓古墳=奈良県桜井市、朝日新聞社ヘリから、寺脇毅撮影卑弥呼の墓との説がある箸墓古墳=奈良県桜井市、朝日新聞社ヘリから、寺脇毅撮影

写真:箸墓古墳の付近で出土した土器(写真手前の2点)。これらの付着物で年代が測定された=奈良県桜井市立埋蔵文化財センター拡大箸墓古墳の付近で出土した土器(写真手前の2点)。これらの付着物で年代が測定された=奈良県桜井市立埋蔵文化財センター

年表:  拡大  

地図:  拡大  

 古墳時代の始まりとされる箸墓(はしはか)古墳(奈良県桜井市)が築造されたのは240〜260年という研究を国立歴史民俗博物館(歴博、千葉県佐倉 市)がまとめた。放射性炭素年代測定によるもので、250年ごろとされる卑弥呼の死亡時期と重なる。畿内説と九州説とが対立している邪馬台国の所在地論争 にも一石を投じることになりそうだ。

 「魏志倭人伝」など中国の史書によると、卑弥呼は2世紀末〜3世紀初め、それまで戦乱を繰り返していた倭国(わこく)(現在の日本)の国々が共通 の女王として擁立。邪馬台国に都を構え、239年には中国・魏王朝に使者を送って皇帝から「銅鏡百枚」など多くの品々を贈られたとされる。

 全長280メートルの前方後円墳である箸墓は、最大でも110メートルだったそれ以前の墳丘墓とは規模が大きく違う。強大な政治権力が誕生したこ とを物語り、時代の画期を示すものと考えられている。魏志倭人伝にある卑弥呼の墓と、箸墓の後円部の大きさが近いことなどから、古くから箸墓を卑弥呼の墓 とする考えがあった。

 考古学では、少し前までは4世紀の築造と考えるのが主流だった。宮内庁指定の陵墓で本体の調査はできない。周囲で出土した土器や他の古墳で見つかった鏡などを手がかりに研究が進み、3世紀後半と見る研究者が増え、卑弥呼との関連が注目されるようになっていた。

 歴博は全国の5千点を超す土器の付着物や年輪の年代を測定。その結果、箸墓の堀や堤からも出土し、箸墓が築造された時期の土器と考えられている「布留(ふる)0式」が使われた期間を240〜260年に絞り込んだ。

 31日にハワイで始まる放射性炭素国際会議と、同日に早稲田大である日本考古学協会の研究発表会で報告される。

 歴博研究グループ代表の西本豊弘教授(考古学)は「慎重に進めた5年間の研究の総まとめで結果には自信を持っている。どのようにしてこの年代を求めたのか、だれでも検証できるように測定データも含めてきちんと公表するようにしたい」と話している。(渡辺延志)




asahi nature biology chemistry melting muscle kinoko

筋肉も溶かす、毒キノコ成分発見 京都薬科大准教授ら

2009年5月29日19時10分

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写真:ニセクロハツ=橋本貴美子准教授提供ニセクロハツ=橋本貴美子准教授提供

 食べると筋肉痛や呼吸困難などが起きる毒キノコ「ニセクロハツ」に含まれる強い毒性物質を、京都薬科大などのグループが突き止め、24日付英専門誌ネイ チャーケミカルバイオロジー電子版に発表する。この物質が引き金となって、筋肉が溶けることもわかった。中毒を起こす詳しい仕組みが解明されそうだ。

 ニセクロハツは猛毒で知られる。05〜07年には、加熱すれば食用ともされるクロハツと間違えて食べるなど6件の中毒があり、4人の死亡が報告さ れているが、その中毒物質は謎だった。京都薬科大の橋本貴美子准教授と慶応大の中田雅也教授らは、ニセクロハツを水に浸して抽出液をつくり含まれる成分を 調べた。

 食べさせたらネズミが死んだ成分を分離したところ、その物質が炭素原子を4個もつ小分子シクロプロプ—2—エンカルボン酸であることがわかった。この小分子は、合成化学の研究で利用されることはあるが、生物とのかかわりは知られていなかった。

 死んだネズミの血液を調べると、筋肉が溶け出していることも判明。体の中で何らかの化学反応を起こし、筋肉を溶かすと考えられるという。(瀬川茂子)



2009年5月28日木曜日

asahi shohyo 書評

めぐり逢(あ)った作家たち [著]伊吹和子

[掲載]2009年5月17日

  谷崎潤一郎の『新訳源氏物語』の原稿口述筆記を手がけ、中央公論社(現・中央公論新社)の編集者となった著者が、かかわった作家たちを回想。吉川英治の葬 儀に、故人の別荘からつみ取ってきた草花を持参した川端康成。ノーベル賞受賞を逃した夜、知人や報道陣に「ノーメル賞だ」と機嫌良く酒をふるまった井上 靖。夕食にデパートでカニを買って帰る小説の主人公は現実離れしている、と指摘され、著者に「あなたが言ってくれないから、あたし、買わせちゃったじゃな いの」ともらした有吉佐和子。著者との親密さをうかがわせる素顔の数々がなんとも魅力的だ。

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潤一郎訳源氏物語 (巻1) (中公文庫)

著者:紫式部

出版社:中央公論新社   価格:¥ 960

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潤一郎訳源氏物語 (巻3) (中公文庫)

著者:紫式部

出版社:中央公論新社   価格:¥ 1,000

asahi shohyo 書評

ジャンゴ・ラインハルトの伝説 [著]マイケル・ドレーニ

[掲載]2009年5月24日

  副題は「音楽に愛されたジプシー・ギタリスト」。独創的な超絶技巧の即興演奏でジャズギターの可能性を大きく広げた先駆者ジャンゴ(1910〜53)の奔 放な生涯と伝説の真偽を、民族的伝統文化や時代背景を踏まえ詳述した。例えば名曲「ヌアージュ(雲)」を冠した章。第2次大戦中、ユダヤ人とロマ人を迫害 しジャズを堕落した音楽としたナチスだが、「自由の音楽」は自国にも浸透し、ジャンゴが困難な中でも活躍する独占領下のパリが活写される。D・エリントン ら欧米の演奏家も数多く登場し、読みごたえ十分の伝記だ。

    ◇

 小山景子訳

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ジャンゴ・ラインハルトの伝説 音楽に愛されたジプシー・ギタリスト

著者:マイケル・ドレーニ

出版社:シンコーミュージック・エンタテイメント   価格:¥ 3,360

asahi shohyo 書評

ビールの科学 [監修]渡淳二 [編]サッポロビール価値創造フロンティア研究所

[掲載]2009年5月24日

 おいしさのバロメーターのきれいな泡は「3度注ぎ」でつくる。グラスは斜めにせず、垂直に。初めは底に勢いよく注いで泡立たせ、2度目はゆっくり落ち着かせ、3度目は縁まで泡を盛り上げるよう静かに。こんな役立つコツのほか、製造工程や"第3のビール"のうまさを解説。

asahi shohyo 書評

難解な本を読む技術 [著]高田明典

[掲載]2009年5月24日

  ラカンやデリダは手ごわい。冒頭から絶壁にはばまれ撤退を余儀なくされた人も、「自分はバカなんじゃないか」と落ち込まず再挑戦するために知っておきたい スキルがある。「何を読まないか」からノートの取り方までを手ほどきし、見たこともない光景を楽しむ読書の冒険へいざなう。

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難解な本を読む技術 (光文社新書)

著者:高田明典

出版社:光文社   価格:¥ 861

asahi shohyo 書評

人文学のシリーズ刊行

[掲載]2009年5月24日

  岩波書店は「断片化する学問の在り方に抗して人文学的知の本質を問う」をテーマに、全11冊の新シリーズ「ヒューマニティーズ」を26日から刊行する。第 1回配本は中島隆博著『哲学』と佐藤卓己著『歴史学』で、その後に『法学』『文学』『教育学』『経済学』などを出す。各1365円。それぞれの学問がどの ように生まれたかや学ぶ意味などを考察。役立つ本の紹介もしている。

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哲学

著者:中島 隆博

出版社:岩波書店   価格:¥ 1,365

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コーナー ヒューマニティーズ 歴史学

著者:佐藤 卓己

出版社:岩波書店   価格:¥ 1,365

asahi shohyo 書評

モンテ・クリスト伯 [著]デュマ

[掲載]2009年5月24日

  • [筆者]筒井康隆(作家)

■子供向けリライトでなく

  戦雲ますます急を告げ、市内にいたぼくの家族も、千里山のお爺(じい)ちゃんの家に疎開してきた。ぼくの家族六人は、松山家の二階で生活することになっ た。さらに階下の書斎には父親の本がどっさりと運びこまれ、積み上げられた。これでぼくはすっかり喜んだ。もう文学全集だって読める年齢になっていたから だ。もともとそこにはお爺ちゃんの書棚もあったのだが、尾崎紅葉『金色夜叉』だの小杉天外『魔風恋風』だの、子供が読んでも面白くないと思える本ばかりが 並んでいたのだ。

    ◇

 最初に手をつけたのがデュマ『モンテ・クリスト伯』二巻である。子供向きにリライトされた『巌窟王』の原作だということは知っ ていたので、面白いに違いないという確信があったからだ。読みはじめてぼくはまず、児童向きの本で読まなくてほんとによかったと思った。「神は細部に宿 る」なんて諺(ことわざ)はまだ知らなかったが、その諺はまさに小説のためにあったのだ。子供向きの本ではストーリイを追うあまり細部の描写や瑣末(さま つ)なエピソードは省かれてしまう。しかし小説の真の面白さはそういう部分にこそあり、実は以前、同じデュマの『三銃士』を児童もので読み、ちっとも面白 くなかった経験がある。人物がチャカチャカと動くだけの紙芝居的な展開にすぐ嫌気がさし、以後、その種のものは読まなくなった。これは今でも正しかったと 思っている。

 新潮社の世界文学全集の第十五巻、第十六巻として『モンテ・クリスト伯』が出たのは上巻が昭和二年、下巻が同三年である。一年 弱の間隔で配本されているが、ぼくはこれを幸せにもふた晩か三晩で読めたのだ。読んだのは二階の、ぼくひとりに当てられていた部屋の蒲団(ふとん)の中。 とにかく面白くて面白くて、明け方になるまで夢中になって読んだ。上巻の訳が山内義雄、下巻はなんとあの大宅壮一が訳している。この全集にはみなカバーが かかっていて、それには作品内の一場面が泰西名画のようなタッチで美しく描かれていた。この本の上巻のカバーはシャトー・ディフの断崖(だんがい)から布 袋に入れられたダンテスが海に投げ込まれようとしている場面、下巻のカバーはメルセデスがモンテ・クリストに我が子の助命を嘆願している場面である。

 あり余る財宝を手に入れたモンテ・クリスト伯が、あらゆる手段でじわじわと復讐(ふくしゅう)していく後半がぼくには面白かっ た。この作品を書くにはどれほどの精力が費やされたのかと思うほどの構想と熱気に包まれ、後半、多彩な人物と共に物語は悠然と進んでいく。読み終わり、茫 然(ぼうぜん)とせざるを得ない。これは人間業ではない、これ以上の復讐譚(たん)を書く作家はもう出ないのではないかと思い、アレクサンドル・デュマは 天才だと思い、解説にも書かれているように、この時期のフランスでその名を喧伝(けんでん)された双璧(そうへき)がナポレオンとデュマであったというの も当然と思えた。

    ◇

 以後、ぼくは今でも、この作品を子供向けの本でしか読んでいない若い作家志望者に、原典で読むことを奨(すす)めている。

    ◇

 現在は、山内義雄訳が岩波文庫から7巻で出ている。

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モンテ・クリスト伯〈1〉 (岩波文庫)

著者:アレクサンドル デュマ

出版社:岩波書店   価格:¥ 798

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モンテ・クリスト伯〈2〉 (岩波文庫)

著者:アレクサンドル デュマ

出版社:岩波書店   価格:¥ 798

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モンテ・クリスト伯〈3〉 (岩波文庫)

著者:アレクサンドル デュマ

出版社:岩波書店   価格:¥ 798

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モンテ・クリスト伯〈4〉 (岩波文庫)

著者:アレクサンドル デュマ

出版社:岩波書店   価格:¥ 798

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モンテ・クリスト伯〈5〉 (岩波文庫)

著者:アレクサンドル デュマ

出版社:岩波書店   価格:¥ 798

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モンテ・クリスト伯〈6〉 (岩波文庫)

著者:アレクサンドル デュマ

出版社:岩波書店   価格:¥ 798

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モンテ・クリスト伯〈7〉 (岩波文庫)

著者:アレクサンドル デュマ

出版社:岩波書店   価格:¥ 798

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金色夜叉 (新潮文庫)

著者:尾崎 紅葉

出版社:新潮社   価格:¥ 740

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魔風恋風 前篇 (1) (岩波文庫 緑 114-1)

著者:小杉 天外

出版社:岩波書店   価格:¥ 588

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魔風恋風 後篇 (3) (岩波文庫 緑 114-2)

著者:小杉 天外

出版社:岩波書店   価格:¥ 693

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巌窟王 (講談社 青い鳥文庫)

著者:アレクサンドル デュマ

出版社:講談社   価格:¥ 756

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三銃士〈上〉 (岩波文庫)

著者:アレクサンドル・デュマ・Alexandre Dumas・生島 遼一

出版社:岩波書店   価格:¥ 840

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三銃士〈下〉 (岩波文庫)

著者:アレクサンドル・デュマ・Alexandre Dumas・生島 遼一

出版社:岩波書店   価格:¥ 840