2009年10月21日水曜日

mainichi shasetsu 20091020

社説:新型ワクチン 安心できる情報提供を

 自分や子どもは、いつ、どこで接種できるのか。そんな不安や戸惑いを感じている人が多いのではないか。新型インフルエンザの国産ワクチンの接種が19日から始まった。しかし、誰もがすぐに接種を受けられるわけではないからだ。

 まず、医療関係者から始まり、妊婦やぜんそく患者などの接種は来月からだ。1歳から小学校3年生の子どもや、1歳未満の乳児の保護者への接種は、さらに後になる。

 多くの人が軽症で治るとはいえ、重症化のリスクが高い人たちは不安を抱えているはずだ。なるべく早く受けたいと願う人がいるのは当然だ。にもかかわらず、市民への情報提供は十分とはいえない。

 情報不足は混乱を招く元であり、問い合わせが殺到すれば医療機関への負荷を増すことにもつながる。国や自治体は接種の手順などをさまざまなチャンネルを使って迅速に情報発信すべきだ。季節性と新型のワクチンが同時接種できるといったことも、市民が知りたい情報だ。

 新型ワクチンは2回接種が必要と考えられていたが、健康な成人なら1回で効果があるとわかった。接種できる人数は大幅に増え、接種時期も早められるかもしれない。

 しかし、医療機関の接種態勢が整わなければ、逆に遅れる恐れもある。国や自治体、地域の医師会は、情報を効率よくやりとりし、混乱なくスムーズに接種できる態勢の整備を急いでほしい。

 ワクチンの限界やリスクについて、国民によく説明しておくことも欠かせない。

 インフルエンザワクチンは、患者の重症化や死亡を防ぐ効果があるが、感染そのものを阻止できるわけではない。数千万人に接種した場合、まれではあ るが、重い副作用が出ることがありうる。ワクチンとの関係がすぐにはわからない場合もあるだろう。その際に社会的混乱を招かないよう、副作用をできる限り 早く見つけて重要性を検討し、情報公開していく必要がある。

 新型対策にとってワクチンが万能でないことも、改めて肝に銘じたい。重症者を守るには、医療体制をパンクさせないことが大事だ。単に心配だからと 医療機関を受診したり、インフルエンザの「陰性証明書」を病院に求めたりすることは避けたい。患者を振り分ける「発熱外来」の有効活用も、改めて見直して はどうだろうか。

 新型インフルエンザの流行は拡大を続け、「注意報レベル」に達している。子どもが重症化するケースも目立つ。パンデミックを乗り切るには、ワクチンや抗インフルエンザ薬を有効利用しつつ、柔軟かつ迅速に対応することが欠かせない。

毎日新聞 2009年10月20日 0時02分(最終更新 10月20日 1時07分)




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