社説:世界食料デー 飢餓は遠い国の悲劇か
世界を脅かす最大の問題は、大流行が心配される新型インフルエンザでも、いつどこで起きるかわからないテロの恐怖でもない。世界の死因の第1位で あり、毎日2万5000人以上が命を落とす飢餓(人として生きていくうえで最低限の栄養が不足した状態)である。死者の多くは5歳未満の子どもなのだ。
悲劇をなくそうと、1980年の国連総会は、国連食糧農業機関(FAO)の設立日の10月16日を「世界食料デー」に制定した。FAOは15年ま でに8億人の飢餓人口を半分に減らす目標を掲げ、国際支援の拡大などを訴えてきた。だが、07年以降の国際的な穀物価格高騰で、飢餓人口は逆に増え始め る。国連によると、07年から08年にかけ1億1500万人が新たに飢餓に陥り、09年末には飢餓人口は10億人を超える。
穀物価格は高止まりの状態だ。02〜04年平均を100とする国際食料価格指数は昨年6月の214を最高に今年2月に139になったが、5月以降は150台と反転している。
こうした中で、FAOは各国首脳らによる「食料サミット」を来月16日からローマで開く。途上国からは窮状打開に切実な声が寄せられるはずだ。鳩 山内閣は、民主党の政権公約にあるように積極的な援助に乗り出してほしい。自国の経済状況が厳しい時に、国外に多額の税金を使うことには釈然としない向き もあるだろうが、日本は年間6000万トン近くの農作物を輸入している。他国の土地と水と労働力に胃袋を満たしてもらう国として、積極的なかかわりは当然 ではないだろうか。
政府に任せるだけでなく、草の根の援助に加わることもできる。食事代の一部をアフリカの子どもの給食支援にあてる活動をしている非営利組織「テー ブル・フォー・ツー」は、来月15日まで「100万人ごはん」の運動を展開する。20円の寄付金が付いた弁当や料理を飲食店や企業・自治体の食堂などで提 供し、給食100万食をまかなう寄付を集める計画だ。コンビニの「スリーエフ」、ファミリーレストランの「デニーズ」なども協力する。
また、非政府組織の「日本国際飢餓対策機構」は来月中旬にかけ、大阪府や兵庫、福島、鹿児島、富山県など各地で講演や現地報告会、バザーなどのイベントを催し、一般市民の支援を呼びかける。
飢餓は遠い国の、手のつけようがない悲劇ではない。私たちの食生活にもつながる身近な問題である。目の前の食べ物がどこから、どうやって来たのか考え、「必要以上に買わない」「食べ物を捨てない」といったことを心がける。そんな小さなことが解決への第一歩になる。
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