2009年10月4日日曜日

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リスボン条約:アイルランド批准 欧州新体制へ

批准賛成が多数を占め喜びの表情を浮かべる賛成支持者ら=ダブリン市内で2009年10月3日、隅俊之撮影
批准賛成が多数を占め喜びの表情を浮かべる賛成支持者ら=ダブリン市内で2009年10月3日、隅俊之撮影

 【ダブリン福島良典】欧州連合(EU、加盟27カ国)の機能を強化する新しい基本条約「リスボン条約」の是非を問うアイルランド国民投票の開票が 3日、実施され、圧倒的な賛成多数で条約が批准されることが決まった。これにより、来年初めまでの条約発効に道が開け、全加盟国の批准手続き終了を経て、 EUは独自の「大統領」や「外相」を備えた新体制に移行する。

 リスボン条約を国民投票に付すのは加盟国中、アイルランドだけで、投票は批准が否決された昨年6月に続き2度目。中央選管のホームページによると、暫定集計で賛成67.13%、反対32.87%。有権者数は約308万人。

 前回は政府による啓発運動の出遅れが響き、反対53.4%、賛成46.6%の結果となり、欧州統合にブレーキがかかった。今回はEUがアイルラン ドの軍事的中立の尊重などを保証したことに加え、主要政党や経済界が「金融危機による経済打撃からの再生にはEUが必要」と訴えた運動が奏功した。

 国民に批准を呼びかけてきたカウエン首相は「より強く、より良いアイルランドと欧州に向け一歩を踏み出した」と勝利宣言。EUの行政府・欧州委員 会のバローゾ委員長は「EUにとって偉大な日だ」と述べ、残る未批准国のポーランドとチェコの両国大統領に対し批准書への速やかな署名を求めた。両国は議 会が批准を承認済みで大統領の署名だけが残っている。リスボン条約の発効には全加盟国の批准が必要。条約が発効すれば、EUが01年から取り組んだ機構改 革努力が実を結ぶ。

 リスボン条約下ではEUを代表する「大統領」が新設されるほか、分散していた対外的な窓口が「外相」に集約され、国際社会に対するEUの発言力が 強化される。また、欧州統合をけん引してきた欧州委員会の組織が改革され、EUの政策決定に、加盟国や欧州議会の権限が強化される。

 ◇ことば リスボン条約

 20カ国以上に拡大したEUの求心力を高め、効率化するため「欧州憲法」が提案されたが、05年に仏とオランダの国民投票で否決された。この後、 憲法の呼称やEU旗・歌など憲法色を排除した基本条約が提案され、07年12月にリスボンで署名された。地名からリスボン条約と呼ばれる。大統領職の創設 などを定める。

毎日新聞 2009年10月3日 21時21分(最終更新 10月4日 1時10分)



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