明治の名著 1—論壇の誕生と隆盛 [編]小田切秀雄、渡邊澄子
■明治の啓蒙(けいもう)思想家に学ぶ
「知の系譜」と銘打ったシリーズが創刊された。文学はもとより、歴史、哲学、宗教等、多様な分野の「知の文化遺産」を発掘すると同時に、原典の内容が明快 に理解できるよう工夫を凝らした全く新しい読書ガイドである。本書は第1回配本の中の一冊。明治の「論壇と隆盛」に焦点を当てている。「世界への序奏」 「進取の気象」「清心研磨」「貧しさを討て」など、啓蒙思想家たちの作品を収録しただけに、明治という時代の瑞々(みずみず)しい心意気が伝わってくるア ンソロジーとなっている。混迷を深める現代にあって、かつてわが国の近代化の先導役を務めた啓蒙思想家に学ぶ意義は少なくない。
編著者によれば、明治国家は公儀世論と開国進取の気風を掲げ、世論を闘わせる場としての論壇の存在を認めた。その結果、新聞、 雑誌、出版事業が稀有(けう)の発達を遂げたのであった。政府による言論統制と闘うなかで論陣を張った新聞人たち、信教の自由をめぐる論争を繰り広げた知 識人たち、浅薄な欧化政策への反動から立ち上がったナショナリストたちなど、彼らは現代日本の水先案内人といえるだろう。
- 明治の名著 1 (明快案内シリーズ)
出版社:自由国民社 価格:¥ 1,680
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