2008年12月4日木曜日

asahi shohyo 書評

江戸の下半身事情 [著]永井義男

[掲載]2008年11月26日朝刊

■現代へと通じる江戸の「フーゾク」

  最近「江戸の町は環境が行き届いていた」「旬の食べ物だけを食していた」などの「江戸礼讃(らいさん)」が聞かれる。これは美化しすぎではないかと著者は いう。資源がないから衣服などが大事にされたのだし、冷蔵・冷凍技術がなかったから旬の食材を食べるしかなかっただけではないか、と。一方、人間の抱く欲 望に現代も過去も差はないとも主張する。金銭欲、支配欲、そして性欲についても。

 そうした今も昔も変わらない男女の営みが、異なる制度や環境の元でどのように行われたのかを、分かりやすく、面白く解説してく れたのが本書なのだ。裏長屋の壁は薄く、隣の話し声は筒抜けである。性生活に関しても、ほとんどプライバシーはないに等しかった。あるいは吉原、岡場所の 売春宿で相部屋(割床(わりどこ)と呼ぶ)は普通であるし、路上で営業する夜鷹(よたか)もいたのである。

 また、当時、繁華な宿場町・品川には、多くの売春宿が存在していた。これらの店の常連は「にんべんのあるとなし」だったとい う。「侍(武士)」と「寺(僧侶)」ということだ。僧侶は建前上、こうした店で遊ぶことは禁止されている。そこで、同じように剃髪(ていはつ)している医 師に化けて出入りしていた。

 江戸の町には至る所に色街があり、男たちは老いも若きも遊びにふける。こればかりは、いつの時代も変わらない光景なのだろうか。

表紙画像

江戸の下半身事情 (祥伝社新書 (127))

著者:永井 義男

出版社:祥伝社   価格:¥ 798

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