2008年12月13日土曜日

asahi shohyo 書評

深いテーマに挑む文庫『相棒』

2008年12月13日

 テレビ朝日系で放映中の「相棒 season7」は薫ちゃんこと亀山薫刑事の「卒業」という話題もあり、高い視聴率を記録している。この「卒業」の理由を、テレビ朝日の制作スタッフは「作品のリアリティーを守るため」と説明する。

 その「リアリティー」を、より深く感じることができるのが、累計88万部と好調な「相棒」の朝日文庫ノベライズシリーズだろう。

 第6弾が5日発売の『相棒 season3下』だ。

 シリーズ最高作とも言われる「ありふれた殺人」では時効制度の陰に隠れた被害者遺族の悲哀を描き、感動的な結末が読者の涙を誘うのではないだろうか。

 「相棒」ファンにはおなじみで、死んだはずだった元検事・浅倉禄郎が復活して登場する「大統領の陰謀」では、地方行政の欺瞞(ぎまん)が暴かれる。

 「異形の寺」は、ホラー調で始まるストーリーが次第に性同一性障害などをめぐる人間存在の深刻なテーマへと発展していく。

 このように「相棒」は、通常の「刑事もの」が扱わないであろうテーマに挑み、社会派ミステリーとしての地位を確立してきた。それを改めて小説として読むことで、映像の裏側にある「本質」が見えるのではないだろうか。

表紙画像

相棒season3下 (朝日文庫)

著者:輿水 泰弘・碇 卯人

出版社:朝日新聞出版   価格:¥ 798

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