2008年12月11日木曜日

asahi international life sexual identity problem gay lesbian

東ヨーロッパで広がる性的少数者への攻撃

2008年12月11日

  • アムネスティ・インターナショナル@ボスニア

写真ラトビアでのリガ・プライドマーチにレインボーフラッグを掲げて歩く活動家たち。2008年5月31日(c)AI写真第1回目のサラエボ・クィア・フェスティバルを混乱させるフーリガン。2008年9月24日(c)Photo/Amel Emric 写真アムネスティメンバーと「平等は人権」バナー。2008年5月31日(c)AI写真ラトビアのリガ・プライドに抗議する人々が掲げる「絞首刑にされる同性愛者」。2008年5月31日(c)AI / Kaare Viemose

■妨害を受けたクィア・フェスティバル

 2008年9月24日から4日間、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都で開催される予定だった「サラエボ・クィア・フェスティバル」が、初日終盤に発生した 襲撃によって中止を余儀なくされた。同フェスティバルは、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)など性的少数者への差別の終 結と法の下の平等を、映画上映やパフォーマンスによって平和的に訴えようとしたものだった。多数の若者がフェスティバル参加者を襲い、警官を含む8名が負 傷した。

 フェスティバル準備期間中から、すでに、ホモフォビア(同性愛嫌悪)を煽るキャンペーンを行ない、フェスティバル主催者へのリンチ・投石・国外追放の呼びかけをするメディアがあった。インターネット上では、フェスティバルへの妨害行為が呼びかけられていた。

■脅迫や暴力を放置する当局側

 フェスティバル主催者である性的少数者のための非政府組織、Udruzenje Qによれば、反同性愛の立場からフェスティバル開催に抗議する者たちが、参加者に危害を加えることのできる距離まで接近することを警察は放置していたという。

 フェスティバルの準備期間中から、インターネット上で主催者側への殺害の脅迫が続いていたが、当局は適切な手段をとらなかった。その脅迫の中には、主催者側の一人の首があたかも切断されたかのようにデジタル処理を施した動画の、YouTubeへの投稿もあった。

 さらに、フェスティバル中止後も、暴力を受け負傷した人権活動家や参加者の氏名を地元メディアが公表してしまったことにより、一層その身を危険に さらす事態となった。「私たちとその家族にはいつも不安を感じている。名前や住所が公に知られ、住まいを新たに探さねばならなくなった者もいる。公共交通 機関の利用や一人での外出をためらってしまう。今は、飼い犬が私たちを一番守ってくれる存在だ」と、Udruzenje Qのメンバーはアムネスティに 語っている。このような状況に対して、当局側は一切対策を講じなかった。

 性的少数者の権利を唱える活動家たちの身の安全は、一体誰が守るのだろうか?

■性的少数者の権利保護を!

 当然ながら、ゲイ、レズビアンの人びともその他すべての人びとと同じ権利を持っている。当局は、集会の自由、表現の自由への権利を保障しなければならない。

アムネスティ・インターナショナルは、9月初めに、ボスニア・ヘルツェゴビナのニコラ・スピリック首相宛の書簡を送り、国内に漂う、性的少数者に対する差別拡大の風潮への懸念を表明し、性的少数者の権利保護を求めた。しかし、その書簡への首相からの回答はなかった。

■ナチス・ドイツの時代と変わらぬ性的少数者に対する差別

 ドキュメンタリー映画『刑法175条』は、ナチスによる同性愛者への迫害の実態を、収容所から生還した数少ない生存者の証言に基づいて描き伝えよ うとしている。東ヨーロッパでは今、ボスニアだけでなく、ポーランドやブルガリアでも性的少数者への差別や暴力が起き、問題となっている。ナチス・ドイツ の時代と変わらぬ性的少数者に対する差別がヨーロッパ各地で続いているのだ。この映画は、2009年1月に開催されるアムネスティ・フィルム・フェスティバル第1日目に上映される。

 性的少数者を差別し、多数者の「敵」とみなして抑圧し排除してよい権利は、誰にもない。

(アムネスティ・インターナショナル日本 ジェンダー・チーム 茨木美子)

■ドキュメンタリー映画『刑法175条』

数万人が同性愛を理由に「有罪」とされ、5000人から1万5000人の人々が強制収容所に送られ虐殺されたといわれる、ナチスによる同性愛者への迫害。 この迫害の根拠となったのが、同性愛に刑事罰を科すと定めた刑法175条だった。「この映画は同性愛者を差別するドイツの"刑法175条"によって迫害を 受けたゲイ男性たちとひとりのレズビアンについて、歴史に隠された一面を聞き出している」(山形国際ドキュメンタリー映画祭2001公式カタログより)。

収容所から生還した人々は戦後も差別され、長く沈黙を強いられてきた。数少ない生存者の証言から、失われた愛の記憶と尊厳を踏みにじられた痛みと怒りが静か に伝わってくる。

1999年/米国/ドキュメンタリー/81分/監督:ロブ・エプスタイン、ジェフリー・フリードマン

作品提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭

★☆★ インフォメーション ★☆★

−今日、映画を観る自由があった−

アムネスティ・フィルム・フェスティバル2009 開催!

言いたいことを言う。 行きたいところに行く。

会いたい人に会う。 そして、見たい映画を観る。

私たちが当たり前に思っていることさえ かなわない人びとがたくさんいます。

映画を通して見てみませんか? 今、世界で何が起きているのかを…。

大好評をいただいた2007年の第1回フィルム・フェスティバルに続き、第2回目となる アムネスティ・フィルム・フェスティバル2009 を開催します。

今回も、世界各地の国と地域から、人権をテーマにした選りすぐりのフィクションやドキュメンタリー作品を上映します。

◆日時:2009年1月17日(土)/18日(日)

開場・受付開始10時30分/開映11時

◆会場:ヤクルトホール 東京都港区東新橋1−1−19ヤクルト本社ビル

◆上映作品

2009年1月17日(土)

「免田栄 獄中の生」/「にくのひと」/「アンナへの手紙」/「刑法175条」/「プロミス」

2009年1月18日(日)

「関西公園 〜Public Blue」/「サルバドールの朝」/ 「スタンダード・オペレーティング・プロシージャー(原題)」/「ヴィットリオ広場のオーケストラ」

※上映スケジュールや前売り券購入方法の詳細は、こちらまで。

※前売り・当日券ともに数に限りがありますので、売切れの際にはご了承ください。



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