2008年12月24日水曜日

asahi shohyo 書評

書評委員お薦め「今年の3点」 久保文明

[掲載]2008年12月21日

  • [評者]久保文明(東京大学教授・アメリカ政治)

(1)マイ・ドリーム [著]バラク・オバマ [訳]白倉三紀子ほか

(2)米国世界戦略の核心 [著]スティーヴン・M・ウォルト [訳]奥山真司

(3)アメリカのデモクラシー 第1巻(上・下)、第2巻(上・下) [著]アレクシス・ド・トクヴィル [訳]松本礼二

 オバマ当選は本年の重大ニュースの一つであろう。勝因は経済危機でもあるが、ケニア人の父とカンザス州出身の白人女性の間に生まれた特異な人生を、アメリカの夢と重ね合わせて語る彼の能力にもある。その面目躍如たる本が(1)である。

 そのオバマのアメリカは世界とどのように向き合うのだろうか。ブッシュのアメリカとどのように違うのだろうか。(2)はかなり の程度後者を前提にして執筆された。しかし、オバマのアメリカであっても、世界はアメリカの力を抑え込まねばならないと感じる場面が出てくるかもしれな い。

 (3)は1830年代に執筆されたアメリカ論の古典であり、長い視座でアメリカを理解するには格好の書である。著者はアメリカ 人の習俗に支えられた民主主義の強さを強調するが、同時に、ときに少数意見を圧迫する傾向が存在することも指摘している。浅薄なアメリカ論に嫌気がさして いる人にぜひお薦めしたい。

表紙画像

マイ・ドリーム—バラク・オバマ自伝

著者:バラク・オバマ

出版社:ダイヤモンド社   価格:¥ 2,520

表紙画像

アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)

著者:トクヴィル・松本 礼二

出版社:岩波書店   価格:¥ 945

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