2008年12月24日水曜日

asahi shohyo 書評

書評委員お薦め「今年の3点」 久田恵

[掲載]2008年12月21日

  • [評者]久田恵(ノンフィクション作家)

(1)ビューティ・ジャンキー—美と若さを求めて暴走する整形中毒者たち [著]アレックス・クチンスキー [訳]草鹿佐恵子

(2)満月の夜、母を施設に置いて [著]藤川幸之助・松尾たいこ・谷川俊太郎

(3)変愛小説集 [編訳]岸本佐知子

 今年も何冊もの心に残る本と出会った。ノンフィクション、詩、小説のジャンルから1冊ずつ。

 (1)は女性ジャーナリストの現代アメリカの美容整形事情を描いた作品である。戦争で傷ついた人の身体修復に端を発した美容外 科の歴史から、頻発する医療事故、とどまることを知らない現代人の若返り欲望まで。なにからなにまで書き尽くされていて圧巻。読み応え抜群のノンフィク ションであった。

 (2)は認知症の母の介護の中からこぼれて落ちてきた詩の言葉たち、その中に浮かび上がる親であり、子であることの意味を問う「哀(かな)しいけれどあたたかい」詩集である。介護に苦しんでいる人や傷ついている人を癒やしてくれるに違いない。

 (3)は現代英米文学の中でも「恋愛」ではなく、「変愛」というにふさわしい「愛」を描いた短編小説集。読後、この本好きだなあ、と思わずため息がこぼれ出てしまう、今年の収穫本であった。

表紙画像

表紙画像

満月の夜、母を施設に置いて

著者:藤川 幸之助・谷川 俊太郎・松尾 たいこ

出版社:中央法規出版   価格:¥ 1,575

表紙画像

変愛小説集

出版社:講談社   価格:¥ 1,995

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