ペロー昔話・寓話集　[作]シャルル・ペロー　[絵]エヴァ・フラントヴァー

[掲載]2008年11月26日朝刊

■エスプリのきいた物語と教訓〈豪華愛蔵版〉

　ルイ１４世に仕えた高級官僚であり有能な弁護士として知られるシャルル・ペローは、アカデミー・フランセーズの会員としても活躍した才人だった。多くの業績のなかでも特筆されるのはヨーロッパやフランス各地に伝わる民間伝承を編纂（へんさん）したことにある。単なる収集にとどまらず、簡潔でリズミカルな表現をいかしながら、物語の最後に彼自身による教訓を加えた。

　本書に収録された物語はいずれも当時の風潮と、今の時代にも共通する人生の真実を描き出す。なかには私たちにはおなじみの「眠れる森の美女」「赤ずきんちゃん」もある。もともと、それらは口伝えで親しまれてきた昔話なのである。そんな寓話（ぐうわ）を表現豊かな散文、韻文として文学にまで高めたのはペローの功績といえるだろう。

　不思議な魔法の物語、知恵のある若者が活躍する武勇伝、我慢強いお姫様が幸せになる話など、一つひとつがエヴァ・フラントヴァーの美しいイラストとあいまって、現代に生きる私たちの想像力をかき立てずにはおかない。ペローの教訓もいかにもエスプリを感じさせ、子どもに限らずむしろ大人が楽しめる内容となっている。豪華な装丁が目をひく、プレゼントとしても最適な一冊。

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末松氷海子訳