2008年12月24日水曜日

asahi shohyo 書評

書評委員お薦め「今年の3点」 唐沢俊一

[掲載]2008年12月21日

  • [評者]唐沢俊一(作家)

(1)鴎外森林太郎と脚気紛争 [著]山下政三

(2)懐疑論者の事典(上・下) [著]ロバート・T・キャロル [訳]小久保温ほか

(3)ブルーザー・ブロディ—私の、知的反逆児 [著]バーバラ・グーディッシュ、ラリー・マティシク [訳]田中雅子

 この不景気のおり、あまり高価な本をお薦めするのは気がひけるが、内容は保証する。(1)は明治時代の陸軍・海軍の有名な脚気 原因論争で、脚気対策の麦飯療法を病原菌説にこだわって退け、膨大な死者を出した責任者とみなされてきた、軍医総監・森林太郎の名誉回復を目指した本。肝 心の森の責任に関しては読後も灰色というのが正直なところなのだが、しかし経験主義と学理主義の対立というテーマは現代にも十分に通じる。

 (2)はオカルトや疑似科学、UFOなどの現象を疑う立場から研究する際の、必携書と言える本。項目数、また内容の詳細なことは、これまでの類書をはるかに超える。信じるのは自由だが、まずこれを読んでからでも遅くはない。

 (3)は衝撃の死から20年後に、やっと刊行された伝説のプロレスラーの評伝。あのニードロップをいまだ忘れられない私のようなファンにとり、涙なしでは読めない内容。

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鴎外 森林太郎と脚気紛争

著者:山下 政三

出版社:日本評論社   価格:¥ 4,935

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懐疑論者の事典〈上〉

著者:ロバート・ T・キャロル

出版社:楽工社   価格:¥ 3,675

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懐疑論者の事典 下 (2)

著者:ロバート・T. キャロル

出版社:楽工社   価格:¥ 3,675

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ブルーザー・ブロディ 私の、知的反逆児

著者:バーバラ グーディシュ・ラリー マティシク

出版社:東邦出版   価格:¥ 1,800

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