2008年12月24日水曜日

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英語で授業…「正直、無理」 高いハードルに先生困った

2008年12月23日9時4分

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写真東京都立国際高校の「総合英語」の授業。ほとんど英語だけで進められる=東京都目黒区

 「英語の授業は英語で行うことを基本に」。22日公表された、13年度からの高校学習指導要領改訂案でこんな方針が示された。文科省は「難しい内容は日本語でもいい」「生徒の理解に応じて配慮を」と言うが、それでもハードルは高い。学校現場でうまく生かせるのだろうか。

 「What was Matilda's wish?」(マチルダの願いは何でしたか)「To live with Miss Honey」(ミス・ハニーと一緒に暮らすことです)

 東京都目黒区にある、都立国際高校の1年生「総合英語」。児童文学に沿って英語だけのやりとりが続く。文中の「will」の意味を教員が尋ねると、すぐ「遺言です」と答えが返った。記者が同席したなかで、唯一聞いた日本語。今回の改訂案をすでに具現化したような授業だ。

 同高では、英語関連の授業はほぼ英語だけで進める。2年の高橋ひかるさん(17)は「生の英語を学べるのが楽しい。最初はきつかったけど、どんどん耳が慣れてきて今は当たり前になった」。

 全国英語教育研究団体連合会(全英連)の会長でもある塩崎勉校長は今回の方針を歓迎する。「英語で授業をしたら生徒が分からなくなると言う人がいるが、それは違う。言葉は使うもので、多用すれば生徒の意識も変わる」

 ただ、同高は外国語や国際理解の教育を強く打ち出し、いわば政策的につくられた学校だ。全校生徒約720人のうち、帰国子女と外国人が半数を占める。生徒は様々、学校にも様々な層がある中で、学校現場では「荷が重い」と受け止める向きが多い。

 関東の県立高校の英語教員は率直に「無理」と言い切る。入試の志願者は定員を若干上回る程度で、アルファベットをやっと読める程度の生徒も入ってくる。中学の3年間で「英語は敵」と思うほど嫌いになった生徒もいる。

この教員が授業で心がけるのは「自信を持たせること」だ。少しずつでも単語を覚え、簡単な和訳ができれば学ぶ喜びを感じられる。そんなところに、いきなり英語で話しかけたのでは……。

 教える側も力が問われる。生徒に教えながら自分も英会話学校で学ぶ、こんな「ダブルスクール」も増えそうだ。

 横浜市の私立高校の男性教員(33)は3年前から週1回、英会話スクールの「イーオン」に通う。元々リスニングが苦手だった。レッスンを受けていると、学生時代に習った内容が実際の会話表現とギャップがあると感じる。

 最初はレッスンの自己紹介で職業を言うのが嫌だった。思い直して続け、生徒から「発音うまくなったね」と言われた。英語での授業は「理解できたら生徒は自信を持てると思う」から賛成だが、自分が英語で進められるのは一つの授業でまだ30分程度だ。

 文科省が強い方針に踏み出したのは、和訳や作文偏重だった英語教育への反省がある。経団連が00年に出した意見書「グローバル化時代の人材育成について」で「小中高で英会話を重視」「生きた英語に」と財界の要望をうたったことも底流にある。

 今春公表され、11年度から本格実施される小学校の新学習指導要領でも、小学5、6年生で週1コマの「外国語活動」(英語)を必修化することが示されている。「英語の授業は英語で」も、その流れの中にある。

 文科省は今回、教える英単語の数をどこまで増やすかを議論し「中国の指導要領にあたるものでは3千語、韓国も2800〜3千語」という実情などを踏まえ、「高校で4割増の1800、中高合わせて3千語」とはじき出した。

英語の授業については「まず先生が使うのが第一歩」という。文科省の幹部は「専門として英語を教えているんだから、能力は高いはず。先生がパニックになる ようなことはないだろう」。教員が本当に対応できるのかという点については、内部でほとんど議論にならなかったという。(片山健志、星賀亨弘、上野創)



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