2008年12月24日水曜日

asahi shohyo 書評

書評委員お薦め「今年の3点」 南塚信吾

[掲載]2008年12月21日

  • [評者]南塚信吾(法政大学教授・国際関係史)

(1)「近代の超克」とは何か [著]子安宣邦

(2)転進 瀬島龍三の「遺言」 [著]新井喜美夫

(3)好戦の共和国アメリカ—戦争の記憶をたどる [著]油井大三郎

 (1)は、アジア・太平洋戦争前に日本の植民地であったアジア諸国と日本との関係を、日本の「庇護(ひご)」との観点から見直 そうとする動きがある現在、日本が「近代の超克」と称してアジアに接した過去を基本的に考え直しておかねばならないと警告する理論的力作である。(2) は、日本がなぜあのような戦争を始めあのように戦ったのか理解に苦しむ著者が、親しかった元陸軍作戦参謀の瀬島龍三から折に触れて聞き取った証言を、自己 の史観を交えて記録した興味深い書である。だが、ポイントの一つである1945年8月のソ連との停戦会議の内容については証言を得られなかったよう だ。(3)は、「対テロ戦争」という形で戦争を続けるアメリカの好戦性の原因を、国際政治のなかではなく、植民地時代にまで遡(さかのぼ)るアメリカ史の なかに求めてみようとした問題提起の書である。評者も数カ月アメリカに暮らしてみて、納得できることが多かった。

表紙画像

「近代の超克」とは何か

著者:子安 宣邦

出版社:青土社   価格:¥ 2,310

表紙画像

転進瀬島龍三の「遺言」

著者:新井 喜美夫

出版社:講談社   価格:¥ 1,680

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