2008年12月24日水曜日

asahi shohyo 書評

書評委員お薦め「今年の3点」 松本仁一

[掲載]2008年12月21日

  • [評者]松本仁一(ジャーナリスト)

(1)戦場から生きのびて [著]イシメール・ベア [訳]忠平美幸

(2)ダルフールの通訳 ジェノサイドの目撃者 [著]ダウド・ハリ [訳]山内あゆ子

(3)戦争特派員 [著]ニコラス・ランキン [訳]塩原通緒

 60年以上も戦争がないのはすばらしいことだ。だが同時に、戦争の邪悪さについて、私たちは想像力を失いかけているのではなかろうか。

 現実の戦争がいかにひどいものか、その報告が今年は相次いだ。

 (1)はシエラレオネ内戦で子ども兵にされてしまった12歳の少年の話だ。家族を奪われ、銃を持たされて人を殺すことを強いられる。初めはいやいや、やがて自ら……。

 (2)はスーダン内戦。ダルフールの青年が、その悲惨さを世界に知ってもらうため、欧米メディアの通訳として戦場を案内する。その報告だ。権力が「あいつらは殺してもいいんだ」といったとき、平凡な村人たちがいかに残虐になれるか。

 (3)は、ファシズム台頭期のそうした戦争を、エチオピアやスペインから報道しつづけた新聞特派員の伝記。「殺してもいい人間」を選別すると、国家は毒ガスでも焼夷(しょうい)弾でも平気で使いはじめるのである。

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戦場から生きのびて ぼくは少年兵士だった

著者:イシメール・ベア

出版社:河出書房新社   価格:¥ 1,680

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ダルフールの通訳 ジェノサイドの目撃者

著者:ダウド ハリ

出版社:ランダムハウス講談社   価格:¥ 1,890

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戦争特派員—ゲルニカ爆撃を伝えた男 (INSIDE HISTORIES)

著者:ニコラス ランキン

出版社:中央公論新社   価格:¥ 3,360

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