源氏物語注釈本も海賊版対策? 奈良大、版木2枚を発見
紫式部作の源氏物語の注釈書として江戸時代に流通した「源語梯(げんごてい)」の版木2枚が見つかったと、奈良大学(奈良市)が4日発表した。調査した 永井一彰教授(近世国文学)によると、江戸時代には約80種もの源氏物語の関連本が出版されたが、実際に版木が見つかったのは初めてという。
源語梯は1784年に上中下3巻が発売された。計356ページで作者は不明。いろは順で時節や衣服、飲食などのテーマごとに分類。現在、奈良大図書館など全国の研究機関に約10部が残っている。
見つかった版木は2枚とも長さ56センチ、幅13センチ、厚さ2センチ。1枚につき表裏に8ページ分の文字が彫られている。永井教授らが、同大学 の所蔵で、近世に商業出版された小説や随筆などの版木約5千枚のデータベース化を進めたところ、1997年に京都の古書店で購入した版木の中に含まれてい たという。
「ものけなき」という言葉については「とりつくろはぬさま」と記すなど、庶民にも分かりやすく書かれているのが特徴。元は計45枚の版木があった とされる。出版元が海賊版を作らせないために分散して保存したことや、明治・大正時代に印刷技術が活版に代わるなどしたため2枚しか残らなかったらしい。
永井教授は「売れ行きがよく明治まで100年近く刷られていたようだ。源氏物語が大衆に広まる上で欠かせない辞書になったのだろう」と推測している。(石原孝)
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