書評委員お薦め「今年の3点」 奥泉光
[掲載]2008年12月21日
- [評者]奥泉光(作家、近畿大学教授)
(1)MUSICS [著]大友良英
(2)ヴェーバー「古代ユダヤ教」の研究 [著]内田芳明
(3)戦争サービス業 [著]ロルフ・ユッセラー [訳]下村由一
(1)は、多彩な活動を行うミュージシャンの手になる、音楽の「現在」をめぐるフィールドワークともいうべき一冊。60年代か ら70年代にかけて、ジャズというジャンルをめぐって、とりわけフリージャズにかかわってなされた思考や実験や議論が、いまだに批評力を持ちえていること に大きな刺激を受けた。
(2)は、日本における社会科学研究、ことにマックス・ヴェーバー研究の水準の高さを示す一冊。後半は同じ著者の昔の論文の再 録であるが、いま読んでどれも力強い。著者は1923年生まれ。あとに続く世代がこの水準を保ち得たかと考えると、気持ちはだいぶ暗くなる。さらに今後 は、と考えればもう真っ暗。
(3)は書評にもとりあげたが、現代の傭兵(ようへい)というべき民間軍事会社についてのルポルタージュ。20世紀的なイメージではとらえきれない戦争や国際社会の現状を知るために、いま何より読まれるべき本だと思う。
- ヴェーバー「古代ユダヤ教」の研究
著者:内田 芳明
出版社:岩波書店 価格:¥ 6,195
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- 戦争サービス業—民間軍事会社が民主主義を蝕む
著者:ロルフ ユッセラー
出版社:日本経済評論社 価格:¥ 2,940
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