2008年12月24日水曜日

asahi shohyo 書評

書評委員お薦め「今年の3点」 橋爪紳也

[掲載]2008年12月21日

  • [評者]橋爪紳也(建築史家、大阪府立大学教授)

(1)建築家 安藤忠雄 [著]安藤忠雄

(2)自然な建築 [著]隈研吾

(3)21世紀の歴史 [著]ジャック・アタリ [訳]林昌宏

 建築と都市に関する書籍から印象深い3冊を選んだ。

 (1)は、建築家として40年のキャリアを顧みる自伝。「ゲリラ建築」と称する一連の住宅作品を原点に、いかに建築と向き合 い、都市空間と対峙(たいじ)したのかを語る。空論ではなく実践、故郷大阪への思い、日本人への希望、植樹に賭ける真意など、専門を逸脱して次世代への熱 いメッセージが凝縮されている。

 (2)は、第一線を疾走する建築家が、和紙や石、竹や土など素材を重くみる作風の背景を述べた小著。20世紀を「コンクリートの時代」と批判し、「景観に調和した建築」ではなく「場所に根をはやす建築」をめざす姿勢はラジカルだ。

 (3)は、超帝国と超民主主義の出現を大胆に予測した「未来の歴史書」。「中心都市」が移動するとみる文明史観が興味深い。閉鎖性ゆえに「中心都市」となる機を失した日本に対する評価は、的を射て手厳しい。

表紙画像

建築家 安藤忠雄

著者:安藤 忠雄

出版社:新潮社   価格:¥ 1,995

表紙画像

自然な建築 (岩波新書)

著者:隈 研吾

出版社:岩波書店   価格:¥ 735

表紙画像

21世紀の歴史——未来の人類から見た世界

著者:ジャック・アタリ

出版社:作品社   価格:¥ 2,520

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