2008年12月24日水曜日

asahi shohyo 書評

書評委員お薦め「今年の3点」 広井良典

[掲載]2008年12月21日

  • [評者]広井良典(千葉大学教授・公共政策)

(1)クリエイティブ資本論 新たな経済階級の台頭 [著]リチャード・フロリダ [訳]井口典夫

(2)都市計画の世界史 [著]日端康雄

(3)生命をつなぐ進化のふしぎ 生物人類学への招待 [著]内田亮子

 (1)は待望の翻訳で、内容に賛否両論あるがやはり面白い。私は「資本主義の反転」論のひとつとして読む。つまり資本主義がそ の展開の極において、労働における非貨幣的な価値やコミュニティーといった、資本主義が本来内包しない価値に出会わざるをえないという内容。また「創造的 なコミュニティーの中心としての大学」という議論も示唆的で、これからの大学はそうありたい。

 (2)は分量・構成ともに新書とはいえないような体系的なものだが、逆にこうした内容こそ広く一般に共有されるべきものと感じ る。というのも、現在の日本は「都市」というテーマに真の意味で初めて直面していると考えるから。「空気」で動くムラ社会ではなく、個人が独立しつつつな がるという「都市的なコミュニティー」は日本社会にとって永遠の課題。

 (3)は学問領域の枠を超えた「人間・社会」についての探究の試みとして。

表紙画像

クリエイティブ資本論—新たな経済階級の台頭

著者:リチャード・フロリダ

出版社:ダイヤモンド社   価格:¥ 2,940

表紙画像

都市計画の世界史 (講談社現代新書)

著者:日端 康雄

出版社:講談社   価格:¥ 1,050

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