2008年12月24日水曜日

asahi shohyo 書評

書評委員お薦め「今年の3点」 重松清

[掲載]2008年12月21日

  • [評者]重松清(作家)

(1)旅する力—深夜特急ノート [著]沢木耕太郎

(2)在日一世の記憶 [編]小熊英二・姜尚中

(3)14歳からの社会学—これからの社会を生きる君に [著]宮台真司

 〈旅にはその旅にふさわしい年齢があるのだという気がする〉という一節が、(1)の中にある。それを勝手に敷衍(ふえん)し て、「いま書いておかねば」の思いに満ちた本を選んでみた。52人の在日コリアン1世のライフ・ヒストリーを聞き書きした(2)は、在日1世の高齢化を思 うと貴重な証言集である。だからこそ過去を丹念に拾い集めた本書は、むしろ未来へと開かれているのだ。〈娘が14歳になったら、親として、ひとりの大人と して、自分はどんなことを語るだろう〉と書き起こされた(3)も、社会学の最新の知見を徹底して平易な言葉で伝えようとする宮台真司氏の姿勢に強く惹 (ひ)かれる。〈『深夜特急』の最終便〉と位置付けられた(1)も同様。旅についての文章が自然と人生の箴言(しんげん)になる。それは還暦を過ぎた沢木 耕太郎氏の年齢ゆえでもあるだろうし、なにより40代半ばを過ぎた僕自身の年齢が、そう読ませているのかもしれない。

表紙画像

旅する力—深夜特急ノート

著者:沢木 耕太郎

出版社:新潮社   価格:¥ 1,680

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14歳からの社会学 —これからの社会を生きる君に

著者:宮台 真司 (みやだい しんじ)

出版社:世界文化社   価格:¥ 1,365

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深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

著者:沢木 耕太郎

出版社:新潮社   価格:¥ 420

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