恐竜化石の盗掘防げ 自治体独自に届け出制・保護条例
国内最大級の植物食恐竜「丹波竜」の化石発掘現場。条例で保護区に指定されている=08年2月、兵庫県丹波市
恐竜の貴重な化石が国内各地で見つかるようになり、発掘地の自治体が盗掘対策の条例や規則を独自に設け始めている。現場周辺を保護区に指定して採取を禁じ、中には罰金を科すケースもある。海外では恐竜化石の盗掘や密売は頻発しており、危機感が背景にある。
国内で初めて大型肉食恐竜のティラノサウルス類の歯の化石が96年に見つかった福井県大野市は7月、市化石保護規則を定めた。化石発見現場の周辺など市内24地区を保護区域に指定し、調査や発掘を届け出制にした。住民10人が監視員に任命されパトロールに当たっている。
化石が出土した白亜紀前期(約1億4千万〜1億2千万年前)の地層を含む「手取(てとり)層群」は北陸一帯に広がり、恐竜化石の「宝庫」と呼ばれる。同市担当者は「貴重な化石が残っているかもしれず、勝手に持って行かれてしまうのが何より怖い」と話す。
国内最大級の植物食恐竜「丹波竜」の化石が06年に見つかった兵庫県丹波市。今も第3次発掘調査中で、今後の全身骨格の発見に期待が膨らむ。同市は07 年5月に市恐竜化石保護条例を施行。発掘現場の周囲を保護区とし、自己所有地以外での化石採取を禁じた。違反には5万円以下の罰金が科せられる。市恐竜を 活かしたまちづくり課の村上研一課長は「市が扱う初めての恐竜化石。現場は生活圏の近くで簡単に近寄ることができる。今後何が起きるかわからず、罰金も含 めた対策を取った」と理由を話す。
「丹波竜」が発見された白亜紀前期の「篠山層群」は兵庫県丹波、篠山両市にまたがる。その篠山市でも5月、同時期の国内最古級の哺乳(ほにゅう) 類化石が発見された。同市はすぐさま「市脊椎(せきつい)動物化石保護条例」を施行。保護区域での調査や発掘を許可制にして、監視員を2年の任期で設置す ることを決めた。
各市によると、これまで実際に恐竜化石などが盗掘された事例はない。しかし、先進地の中国やモンゴルなど海外では恐竜化石などの盗掘や密売が過去に横行し、対策の法整備に躍起だ。
中国では90年代、恐竜の卵の化石や、古代の鳥「孔子鳥」の化石が国外に大量流出した。刑法で化石盗掘に3年以上10年以下の懲役などを科すようにし た。さらに、02年に古生物化石管理弁法を制定し、行政罰として最高3万元(約40万円)の罰金を科せられるようになった。モンゴルも法律で国外への流出 を禁じており、罰金刑や禁固刑などの実刑もあり得るという。タイは2月、恐竜化石の盗掘を禁じる法律を制定。最長7年間の禁固刑や最高70万バーツ(約 200万円)の罰金刑を科している。
国内外の恐竜研究に詳しい国立科学博物館・真鍋真研究主幹(古生物学)は「日本は恐竜化石の収集家が多く、高額での売買がいったん行われれば市場 が生まれてしまう。熱を帯びてくれば盗掘される危険性は否定できない。海外の闇市場へ流出する恐れもある。何らかの規制は必要だ」と指摘している。(西山 明宏)
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