2008年12月24日水曜日

asahi shohyo 書評

書評委員お薦め「今年の3点」 瀬名秀明

[掲載]2008年12月21日

  • [評者]瀬名秀明(作家、東北大学機械系特任教授)

(1)聖者は口を閉ざす [著]リチャード・プライス [訳]白石朗

(2)世界一高い木 [著]リチャード・プレストン [訳]渡会圭子

(3)木曜日だった男 一つの悪夢 [著]G・K・チェスタトン [訳]南條竹則

 書評委員になってから知ったのだが、発行日を二カ月過ぎてしまった本は原則として紙面で扱えない。オビに描かれる通り急がず ゆっくり読んで時機を逸してしまった(1)だが、ここ数年間に読んだあらゆる小説の中で、最も大切にしたい一冊となった。挫折したひとりの脚本家が故郷に 戻り、慈善を為(な)そうとしたそのときに訪れる悲劇を描いたこの作品は、私たちすべての人間が持つ本来の情動を呼び覚まし揺さぶる。物語ることの素晴ら しさと、物語の才能を持って生まれた人を祝福することの素晴らしさを描き切った作者に大喝采。

 (2)は『ホット・ゾーン』で知られる著者が巨大なセコイアの木に登る人々を追った興奮と驚異のノンフィクション。百メートルの高さに広がる未知の生命圏はほとんどSFだ。

 聖夜にはチェスタトンの最高傑作(3)を。物語と宇宙が一体化する笑いと歓喜のクライマックスは、まさに真のお伽噺(とぎばなし)。生命の誕生を見るようだ。

表紙画像

聖者は口を閉ざす

著者:リチャード プライス

出版社:文藝春秋   価格:¥ 3,675

表紙画像

世界一高い木

著者:リチャード・プレストン

出版社:日経BP社   価格:¥ 2,520

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