2009年10月1日木曜日

mainichi shasetsu 20091001

社説:参院1票の格差 抜本改革、第三者の手で

 「1票の格差」が最大4.86倍だった07年7月の参院選挙区選挙での定数格差について最高裁大法廷は「不平等は憂慮すべき状態だが、見過ごせな いほどではない」と合憲の判断を示した。一方で「投票価値に大きな不平等のある状態」として「国会において速やかに適切な検討をすることが望まれる」とも 述べた。04年の大法廷判決で改善を求められた参院は4増4減などの是正策を実施したが、選挙制度そのものを見直さなければ抜本改革にならないと改めて迫 られたのである。

 参院の定数格差について転機となったのは、6.59倍の格差が問われた96年の最高裁判決だ。それまでは「憲法には選挙区定数を人口比例配分する べき旨の規定がない」との理由で違憲性は否定されていたが、初めて「違憲状態」(判決は合憲)と判断された。それ以降、違憲の目安は6倍と見られるように なり、格差の顕著な選挙区の定数削減などが行われた。

 ところが、04年の最高裁判決は5.06倍の格差を合憲としながら、現行定数配分規定に疑問を呈する裁判官が過半数を占め、「次の選挙で漫然と現 状が維持されたままなら違憲判断の余地は十分にある」と是正を求めた。参院は各党議員による参院改革協議会を設置し、05年の報告書で(1)格差の大きな 選挙区の再配分案(4増4減から14増14減まで5案)(2)議員1人当たりの人口が最も少ない鳥取県を別の県と合区する案(3)全国を10程度のブロッ クとする案などが挙げられた。参院のあり方にふさわしい選挙制度を憲法改正も絡めて論議することにも言及された。しかし、公選法改正に盛り込まれたのは、 現議席の変動に最も影響が少ない4増4減案で、結局5倍近い格差が残ることになった。

 衆院の場合は小選挙区比例代表並立制が導入されると同時に、内閣府に衆院議員選挙区画定審議会(区割り審議会)が設けられ、10年ごとの大規模な 国勢調査に基づき、1票の格差は2倍までを基本とする見直しが行われている。議員以外の有識者から成り、改革案を作成して首相に勧告している。

 参院の格差が大きいのは選挙区が都道府県単位になっているからで、総数を増やさずに抜本改革するには合区やブロック制などの論議も避けられないだ ろう。自らの議席に直接利害が絡む議員の手でどこまで踏み込んだ改革ができるのか。小手先の是正では憲法の保障する法の下の平等を守ることはできない。選 挙制度を根底から見直すには、しがらみのない第三者に委ねるしかないのではないか。5倍近くの格差をこれ以上放置することは許されないだろう。

毎日新聞 2009年10月1日 0時05分




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