2009年10月10日土曜日

asahi international culture literature Nobel literary Prize winner Herta Müller Germany

ノーベル文学賞、ドイツのヘルタ・ミュラー氏に

2009年10月8日20時30分

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写真:ベルリンで8日、ノーベル文学賞受賞の知らせを聞き、住まいのアパート前に姿を現したヘルタ・ミュラー氏=ロイターベルリンで8日、ノーベル文学賞受賞の知らせを聞き、住まいのアパート前に姿を現したヘルタ・ミュラー氏=ロイター

 スウェーデン・アカデミーは8日、09年のノーベル文学賞を、ルーマニア生まれのドイツ人女性作家ヘルタ・ミュラー氏(56)に授与する、と発表した。

 同アカデミーは「韻文の濃密さと散文の率直さをもって疎外された人びとの風景を描き出している」と授賞理由を説明した。賞金は1千万スウェーデンクローナ(約1億3千万円)。授賞式は12月10日、ストックホルムである。

 受賞が決まったことを受けて、ミュラー氏の最新刊の出版社は「驚いていて、いまだに信じられない。今はこれ以上何も言えない」との同氏のコメントを発表した。(土佐茂生)

 ミュラー氏は、53年、ルーマニア西部のバナート地方に生まれた。シュバーベン人と呼ばれるドイツ系少数民族の出身で、ドイツ語が母語。ティミショアラ大学でドイツ文学とルーマニア文学を専攻し、金属工場で技術翻訳者となった。

 しかしチャウシェスク政権による独裁下にあった79年、秘密警察への協力を断ったために職場を追放された。その後、学校の代用教員をしながら創作活動を 続け、82年に発表した短編集「澱(よど)み」がドイツ国内でも高く評価された。84年には職業に就くことと作品の発表を禁じられ、ルーマニアで活動する のは困難となり、87年に出国。以来、ドイツ国内に居住する。ヨーロッパ文学賞、国際IMPACダブリン文学賞など、数多くの文学賞を受賞している。

 97年に邦訳が出た長編「狙われたキツネ」(92年)では、秘密警察と相互密告制度で抑圧される80年代のルーマニアの民衆の日常を丹念に描いた。とりわけ過酷な同化政策に苦しめられる少数民族に対する筆は温かい。

 小説やエッセーなど、コンスタントに書き続け、今年も長編小説「アーテムシャウケル(息のぶらんこ)」を刊行している。





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