社説:日航と外資交渉 抜本策として十分か
再建中の日本航空が15日、米大手のデルタ航空、アメリカン航空とそれぞれ進めている資本参加を前提にした提携交渉について、「10月半ばまでに結論を出す」と表明した。
運航トラブルによる旅客離れや燃料費上昇にあえいだ日航は07年初め、4300人削減や低採算路線廃止、子会社売却などを柱にした新経営計画をまとめた。ところが効果は1年あまりしか続かなかった。
08年3月期(連結)で169億円の最終利益をあげて3年ぶりの黒字になったが、リーマン・ショックなどで09年3月期は630億円の損失、さら に10年3月期も630億円の損失見通しだ。このため、日本政策投資銀行とメガバンク3行から1000億円の政府保証付き融資を受けたが、追加融資を受け る条件として、学者らによる「有識者会議」をお目付け役にした抜本的な再建策づくりを求められていた。
外資との交渉は、こうした窮地に立つ中で浮上した。共同運航拡大で路線網を可能な限り維持しながらコストを削減する一方、財務基盤の強化で追加融資に向けた信用補完を狙っている。しかし、伝えられる500億円程度の資本増強と共同運航拡大では、抜本策とは言えない。
このため、日航の西松遥社長は15日、11年度までに6800人の削減や国際線25路線程度の廃止・減便の方針を示した。さらに「手厚すぎる」と の批判がある企業年金給付の引き下げ、路線を廃止した営業拠点の撤退などにも踏み込む。いずれも労働組合や地方自治体、OBなどの強い抵抗が予想される が、今月末までに最終計画をまとめる考えだ。
日航経営陣には、外資導入によって経営に厳しい目が入り、長年のタブーとも言える部分に切り込めるとの読みがあるのかもしれない。だが、それは経 営力の限界を認め、自力再建をあきらめたに等しい。今後、羽田、成田両空港の発着枠の拡大で、航空業界の競争は激しくなるだけに、外圧頼みの対応は日航の 今後をますます危うくし、国益を損なう恐れもある。
完全民営化からまもなく22年。日航には「親方日の丸」の言葉がついてまわる。しかし、日航自らの努力不足だけが原因ではない。
国、地方の政治家は実績ほしさに地方空港をどんどん建設して、採算軽視の運航を日航に押しつけた。有力者の口利きによる情実採用が横行し、そうし た風土が社内の求心力と統治力を低下させた。日航の経営問題は、「フラッグキャリア」(国を代表する航空会社)の名のもとに、よってたかって都合のいいよ うに利用し、もてあそんできたツケでもあることを忘れてはならない。
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