社説:米の中東仲介 入植停止の説得続けよ
中東和平の難しさを、オバマ米大統領も思い知らされたのではないか。ニューヨークで開かれた同大統領とネタニヤフ・イスラエル首相、アッバス・パ レスチナ自治政府議長の3首脳会談は、見るべき成果もなく終わった。政権発足以来、オバマ大統領自らの外交活動が、これほど空回りしたのも珍しいだろう。
会談の焦点は、イスラエルによる入植活動の停止だった。イスラエルは占領した土地に大小の住宅地を造り、自国民を移住させてきた。占領地を改変す る行為はジュネーブ条約などの国際法違反といわれ、イスラエルと強い同盟関係にある米国も、原則的に「入植地は和平の障害」との立場をとってきた。
だが、右派ネタニヤフ政権は入植活動停止に消極的だ。対してパレスチナ側には入植活動への不満が積もり、イスラエルとの対立感情が強まっている。中東和平を重点課題とするオバマ政権にとって「入植地」は避けて通れない問題だ。
この日の会談で劇的な打開をめざしたオバマ大統領は、パレスチナ側に暴力の扇動停止を、イスラエルには入植地凍結の実行をそれぞれ求めた。「前進するときだ」と双方の交渉再開を訴えたことも含めて、オバマ氏の主張は筋が通っている。
最大の誤算はネタニヤフ氏が予想外に強硬だったことだろうが、イスラエルの入植活動停止に向けて米側は説得を続けるべきだ。問題は入植地だけでは ない。テロ対策を理由にイスラエルが建設した分離壁について、国際司法裁判所は「国際法違反」とみなし、解体を勧告している。壁がパレスチナ人の居住圏に 食い込む形で造られ、彼らの生活や往来などを阻害しているためだ。
また、国連人権理事会の調査団が今月中旬、イスラエル軍のガザ(パレスチナ自治区)攻撃について報告書を公表し、イスラエルとパレスチナ双方の「戦争犯罪」を指摘しつつ、特にイスラエル側の軍事行動を問題視したことも見逃せない。
もちろんイスラエルにも言い分はあろう。国の安全を重視するのは当然だ。だが、入植地の建設が国民を守ることにつながるのか。むしろ反感を買って 国民を危うくするだけではないかという疑いがある。分離壁も含めて、イスラエルの「安全策」がしばしば国際社会を憂慮させる点にも、重大な疑問がある。
入植地建設にはパレスチナ人の独立への願いを砕く狙いもあるのだろう。しかし、オバマ大統領がカイロでの演説などで再確認したように、中東和平にはイスラエルとパレスチナの平和的な「2国家共存」が必要だ。米側のさらなる仲介と、当事者双方の柔軟な対応を望みたい。
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