沖縄タウナギ:固有種と判明 570万年前から独自進化
環境省が絶滅危惧(きぐ)種に指定している淡水魚・タウナギのうち、沖縄に生息する種は、570万年以上前から独自の進化を遂げた固有種であるこ とが、奈良県橿原市昆虫館の松本清二指導主事らの調査で判明した。沖縄ではヤンバルクイナ(国天然記念物)やイリオモテヤマネコ(同特別天然記念物)など に続く固有種の発見で、保護に向けた動きが高まりそうだ。
同館と東京大、大阪市立大の研究グループが8月、日本魚類学会誌のオンラインジャーナルに発表した。
タウナギは、東アジアや東南アジアを中心に分布し、日本では近畿や九州北部、沖縄の沼地や水田などにすむ。世界のタウナギは外形にほとんど差がな く単一種とされ、日本には明治以降、朝鮮半島や中国から持ち込まれたと考えられてきた。沖縄のタウナギは近年、開発に伴い激減しているという。
松本指導主事は10年前から国内外のタウナギの繁殖行動を調査。福岡や奈良、中国のタウナギは、土に開けた巣穴に泡をつくって受精卵に酸素を供給 し、ふ化後は口の中に入れて育てるが、沖縄のタウナギは酸素を送るだけで口内で育てない。インドネシアと台湾のタウナギは、植物の根に卵を産み付けるだけ で、世話をしないことを突き止めた。
福岡、奈良、沖縄と中国、台湾、インドネシアの計13地点で採集した84匹のミトコンドリアDNAを解析した結果、DNA型は(1)福岡、奈良、 中国(2)台湾、インドネシア(3)沖縄−−の3パターンに分かれた。塩基配列を基に計算すると、沖縄のタウナギが(1)から分化したのは570 万〜870万年前になるという。【林由紀子】
渡辺勝敏・京都大大学院理学研究科准教授(動物生態学)の話 従来の概念を覆す画期的発見で、沖縄のタウナギの重要性は一層高まったといえる。国の天然記念物に指定するなど、保護の枠組みを考える必要があるだろう。
【ことば】タウナギ 淡水魚の一種で、ウナギとは異なる。体長約20〜100センチで、約40センチを超えると雌から雄に性転換する特異な性質を持つ。うろこやひれがなく、粘液で覆われた体表の皮膚と口で呼吸する。
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