2009年9月22日火曜日

mainichi shasetsu 20090922

社説:鳩山政権の課題 暫定税率…総合的な政策を示せ

 ガソリンなどの暫定税率について藤井裕久財務相は、民主党がマニフェストで示した通り、10年度からの廃止を明言した。実現すればガソリンは1リットル当たり25円下がる。

 暫定税率分も含めて自動車関連の諸税は道路特定財源となり、必要性の乏しい道路に巨額の税金が投じられる構造が続いてきた。

 財政が危機的な状況にあり、年金や健康保険制度など基本的な制度の維持も困難になりつつある状況だ。私たちは、暫定税率分も含めて自動車関連諸税を一般財源化し、必要性の高い分野にその財源を振り向けるべきだと主張してきた。

 そして、昨年4月に暫定税率はいったん廃止となる。予算関連法案が参院で否決されたためだが、その際、政府は暫定税率を維持したまま道路特定財源をすべて一般財源化することを決めた。

 自民、公明両党は租税特別措置法案を衆院で再可決し、暫定税率分は約1カ月で元に戻った。ただし、その後に行われた予算編成では、従来と同様に道路予算に割り当てられ、一般財源化は名目に過ぎないことが明らかになった。

 そうした経過をたどった自動車関連諸税の使い道をどうするのかは、鳩山政権にとって大きな課題だ。

 暫定税率について藤井財務相は、第1次オイルショック後の狂乱インフレを抑えるために総需要抑制策の一環として導入されたことを強調してきた。

 不況下では総需要を喚起する方策が必要で、暫定税率廃止で2・5兆円の減税が行われれば、それなりの効果は期待できるだろう。

 無駄な道路をつくるくらいなら、自動車のユーザーに戻して負担を軽減した方がましだというのは、それなりの説得力を持つ。

 とはいえ、ガソリンの価格を引き下げ、高速道路の料金も無料とすれば、自動車の利用がますます拡大するはずだ。経済の活性化にはつながるだろうが、温室効果ガスの削減について高い目標を掲げた鳩山政権の方針と、どう両立するのだろうか。

 また、自動車交通を優遇する措置をとれば、鉄道やフェリーといった他の交通機関にも影響が及ぶという問題もある。

 小沢鋭仁環境相は、二酸化炭素の排出抑制のため環境税の導入の検討を示したが、暫定税率は廃止し、環境税は導入するというのはちぐはぐに映る。

 経済の活性化、地球温暖化対策、交通体系のあり方といった各方面に目配りした総合的な政策を早急に示すことが必要だ。

毎日新聞 2009年9月22日 0時00分



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