社説:日航再建 しがらみを断つ時だ
深刻な経営危機に直面している日本航空は、国土交通相直轄の顧問団(タスクフォース)によるチェックのもとで再建への道を探ることになった。併せて前原誠司国交相は、空港整備の財源となってきた特別会計についても抜本的に見直す考えを表明した。
経営悪化に直面するたびに日航は日本政策投資銀行などからの緊急融資でしのいできた。困れば政府系金融機関に頼るという日航の親方日の丸的な体質はかねて指摘されてきたところだ。
海外の航空会社との資本提携も含む形で日航が示した経営改善計画案について前原国交相は、「不十分」と判定した。国交省と日航、そして政策投資銀行を軸にした銀行団という、従来の構図で再建策を策定しても、日航の抜本的な再建にはつながらないと判断したからだろう。
タスクフォースは、企業再生の実務のプロで構成し、日航はこのタスクフォースの指導を受けながら10月末までに再生計画の骨子を策定し、11月末をメドに最終的な再生計画をまとめるという。
日航を取り巻くこれまでのしがらみとは無関係に、事業内容を洗い直し、将来戦略を見据えた再建策を策定するのが、タスクフォースの課題だ。過去のいきさつに拘泥せずに、大胆に切り込んでもらいたい。
ただ、日航の経営問題は、日航だけが責めを負えばいいという問題ではない。日本の航空運輸をめぐる政治と行政のなれあいの縮図が、日航の経営に投影されていることも忘れてはならない。
ハブ機能を果たす首都圏の空港の発着能力に限界がある一方で、地方空港の建設を続けた。その結果、採算がとれない路線が広がり、日航の経営の足を引っ張った。
空港整備の財源となっている特別会計にメスを入れるのは当然のことで、着陸料や航空機燃料税などが、空港という箱物に流れ続ける構造を断ち切ってもらいたい。
前原国交相は日航の自主再建をめざすという。しかし、複雑な労務問題や、退職者年金に対する過重な負担といった問題を解決するには、民事再生法など法的な枠組みの活用も視野に入れるべきだろう。
日航の収支改善のためには不採算路線からの撤退は仕方がない。ただ、離島など生活に不可欠な路線や、地域活性化のための路線については、個別に公的な支援を設け、運航を維持する仕組みも必要だ。
政官業のもたれあいという、責任の所在が不明確な構図の中で、日航の経営問題は繰り返されてきた。その背景にある特別会計の問題も含め、抜本的な刷新を期待したい。
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