2009年9月20日日曜日

mainichi shasetsu 20090918

社説:予算の改造・編成 大胆にスピーディーに

 新政権の経済運営で最初の大きな仕事は、15兆円近くに及ぶ今年度補正予算の大幅な組み替えと、これに続く来年度の予算編成だ。自民党政権下で築かれた既得権と既成概念を切り崩し、世の中の変化をふまえた予算の実現を期待したい。

 民主党は衆院選で、子ども手当など初年度だけで総額7.1兆円の新政策を約束した。この財源を生み出すため、予算を徹底的に洗い直す考えだ。5月に成立した今年度補正の中でムダな支出を中止し税金を回収する組み替え作業は、新政権の実行力が試される。

 まず、自殺予防や介護施設整備などの対策を実施するための46基金、総額4.3兆円だ。当初は名称未定の基金もあり、規模水増しのための苦肉の対 策が目立った。何よりも「基金」に支出された税金は官庁や天下り団体が数年間手元に置き、「取り崩し」という外部の監視が届かない手続きによって、勝手に 使える問題があった。執行済みか、未執行かで仕分けせず、意味のある対策か、効果はあるのか、という本質的な視点で見直すべきだ。さらに補正には道路など の公共事業費も盛り込まれたが、数兆円規模の予算が手つかずとみられている。民主党は、ムダな公共事業の見直しを公約にしてきただけに、大胆に切り込んで ほしい。

 こうした激変のあおりを被るのは、官庁や補正予算をあてにしていた地方自治体という見方がある。実際、都道府県知事らから「相当な混乱が出る」と の声を聞く。だが、広く長期に市民生活が混乱するならばともかく、役所内の調整や外郭団体、議会との関係などを念頭に面倒だと思ったり手間を惜しんでいる のなら問題だ。政権交代という潮流の変化を現実問題として受け止め、そもそも必要な予算だったのかを含め柔軟に対応すべきだ。景気の下支え効果が損なわれ る心配も出ているが、今年度補正の景気刺激効果はもともと疑わしかった。経済対策が必要で、なおかつ有効な対策があれば、改めて予算化すればいい。

 むしろ、地方自治体や景気への影響という観点で注文したいのは、一連の作業を迅速に進めることだ。7月に決まった来年度予算の概算要求基準も根本 から見直し、「国家戦略局」が政治主導で予算の大枠を決めていくという。補正の組み替えに手間取り、新たな仕組みを動かすのに時間を費やし、来年度予算の 編成が年内に間に合わないのでは話にならない。何をやるにも後手後手だった自民党政権の時代と同じだ。世界の動き、時代の流れに後れをとらないスピード感 が欠かせない。

毎日新聞 2009年9月18日 3時35分



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