社説:日中首脳会談 「友愛外交」で信頼築け
鳩山外交がスタートした。皮切りはニューヨークでの国連気候変動サミットに先立って行われた中国の胡錦濤国家主席との会談だった。
アジア重視を掲げる鳩山政権の外交にとって、中国との関係は日米基軸とともに重要な要素である。10月には中国で日中韓の首脳会談も予定されている。鳩山由紀夫首相が打ち出した「友愛外交」をアジアの国々との信頼関係構築にどうつなげていくかが問われる。
予定を超過して1時間近くに及んだ会談について、首相は「大変和やかな雰囲気で、率直に自分の思いを申し上げることができた」と感想を述べた。首相が満足げだったのは、持論の政治理念である「友愛精神」を外国首脳との初めての会談で披露できたからだろう。
会談で首相は「友愛精神にのっとった国際関係をつくりたい」と切り出して東アジア共同体構想に言及し、「互いの違いを認めながら乗り越えて信頼関係を構築していきたい」と述べた。
東アジア共同体は首相がアジア外交の柱として力を入れている構想だ。首相就任前、雑誌に寄稿した論文でも、「友愛」の国家目標のひとつとしてこの構想を示しアジア共通通貨の必要性などを強調している。
東アジアの国々は政治体制がさまざまだし文化や価値観も多様だ。経済格差も激しく共同体づくりは口で言うほど簡単ではない。
首相は就任前、「夢を持つことは悪いことではない。最初はすべて夢で始まったものが最終的には現実になる」と語ったことがある。この構想の中に米 国や日米同盟をどう位置づけるかなど詰めるべき問題点は多いが、まずは「友愛外交」の象徴として大きな理想を掲げたものと理解しておこう。
乗り越えるべき日中間の現実の課題のひとつに東シナ海のガス田問題がある。昨年6月の日中合意にもかかわらず共同開発のための作業は滞ったまま だ。首相が「東シナ海をいさかいの海でなく友愛の海にしたい」と呼びかけたのに対し、胡主席は「敏感な問題」としながらも「平和友好協力の海にしたい」と 応じたという。両国間の紛争は話し合いで解決しようという意思表示だろう。中国側に一層の努力を求めたい。
首相が先の大戦での日本による侵略や植民地支配を謝罪した1995年の「村山談話」を踏襲する考えを伝えたことは関係発展にプラスになるだろう。 胡主席は「評価する」と答えたという。首相は靖国神社に参拝しないことも明言している。こうした姿勢は日中間のトゲになっている歴史認識問題を乗り越える ための環境整備に役立つはずである。
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