2009年9月28日月曜日

mainichi shasetsu 20090927

社説:G20サミット 危機を進歩につなげよ

 「危機」や「ショック」と名の付く出来事は、新しい協調の枠組みももたらすようだ。

 G8サミット(主要8カ国首脳会議)の起源がそうだった。米国が金とドルの交換停止を発表した1971年のドルショックとその後の石油危機は先進 国首脳の定期会合につながった。そして2008年秋、リーマン・ショックで深刻化した金融危機は、主要20カ国・地域のG20サミットを生んだ。当初は 「緊急会議」だったが、3度の開催を経て定例化が決まり、経済協議ではG8に代わる最も重要な舞台に格上げされた。

 中国、インドといった新興国の台頭や、地球規模の難題が増えたことなど、時代が環境を大きく変えたのだから枠組みの衣替えも当然だ。参加者の増加 で合意形成は難しくなるだろうが、だからといって変化した現実に対応しないわけにはいかない。問題はいかにG20体制を効果的な枠組みに育てていくか、で ある。

 何点か注文したい。まず、少なくとも当面は、金融危機への対応というG20の原点を最重視することだ。今回の会議では、金融機関の暴走を防ぐため の規制強化や報酬体系の改革が原則として決まった。しかし、これらが有効に機能するか否かはすべてルールの中身と厳格な執行にかかっている。金融業界の抵 抗などで骨抜きになるようなことを許してはならない。

 第二は、会議の議題をしぼり込むことだ。テーマを広げすぎたG8の経験から学ぶべきだろう。緊急性の高い問題で首脳ならではの議論が期待されるものに限定すべきだ。

 鳩山政権にも言いたい。首相はG20の必要性は認めつつ「G8をなくすことには反対」と表明した。参加国が多いと事前調整に手間がかかり官僚主導 になりかねないからだという。しかし、それでは逃げているようにしか映らない。せっかく国連演説で、違う立場の国々の「懸け橋」を目指すと積極貢献を誓っ たのだから、G20を有意義なフォーラムに高めるための貢献でも積極的であってほしい。サミットは本番だけが政治家の出番ではない。それまでの準備にこ そ、首脳の指導力が発揮されるべきである。

 やれることは多い。G20サミットの前に、アジアの参加国による首脳会議や非参加国も含めたアジア全体のサミットを開くのも一案だ。欧州勢はすでにやっている。テーマ次第では、アジア以外の2、3カ国で別途、サミットを開き歩調を合わせる工夫もあっていい。

 危機の痛手はあまりにも大きい。それをはるかに上回る進歩なしには苦痛を強いられた世界の市民が納得しない。その進歩を主導するのは首脳らの責任だ。

毎日新聞 2009年9月27日 0時20分




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