アイヌ「個人史館」:建設へ…50人から聞き取り 北海道
帯広市出身のアイヌ民族の女性らが現代のアイヌ民族の人生を紹介する「個人史館」建設の準備をしている。50人を目標にした聞き取り調査を進め、 5年後、北海道十勝管内清水町の旭山地区の森に完成させる。一帯はアイヌ語で「母なる森」を意味する「ハポネタイ」と命名し、アイヌ文化を発信する場とし ても整備する。【田中裕之】
計画しているのは帯広生まれの恵原るみ子さん(57)=埼玉県川口市在住=ら。予定地はシラカバの木が生い茂る約6万平方メートルで、06年5月に購入した。長女詩乃(うたえ)さん(32)ら10人の仲間と準備を進め、08年10月に活動拠点となる住宅を建てた。
個人史館の建設は、恵原さんの両親に対する思いが原点にある。「両親は差別や偏見を恐れてか、アイヌ語を話すことはなく、私にアイヌ文化を伝えよ うともしなかった。アイヌ民族として生きづらかったはずで、一人一人に悲しい人生がある」。アイヌ民族の歴史を扱う本は多かったが、恵原さんは「個人が何 を感じて生きてきたのかを知ることで、本には書かれていない歴史が見えてくるはず」と話す。
今年5月、十勝管内の初老男性に最初の聞き取りをした。ビデオカメラを回しながら生い立ちからの生活や苦労話を聞き、丸2日間かかった。個人史館 では、生々しさを感じてもらうためすべてのインタビュー映像を編集して流すつもりだ。今後も聞き取りを続けるが、つらい過去を話したがらない人もおり、 「信頼を築かなければできない難しい作業」(恵原さん)という。
ハポネタイにはアイヌ民族の音楽や踊りを演じるステージも建設し、詩乃さんは「アイヌ民族の触れ合いの森にしたい」と意気込む。現在は初イベント として絵画展を開き、アイヌ文様をアレンジした小笠原小夜さん(36)や芳野省吾さん(29)の絵画など約40作品が遊歩道の木に飾られている。27日ま で。入場無料。問い合わせは恵原さん(080・5020・1994)。
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