2009年9月29日火曜日

mainichi shasetsu 20090929

社説:自民党新総裁 谷垣さんもチェンジを

 いばらの道が待ち受ける。さきの衆院選で惨敗し野党に転落した自民党の新総裁に谷垣禎一元財務相が選ばれた。政権交代で自民党の存在意義すら問われるかつてない逆境の下、党の立て直しを迫られる。

 無難で優等生的な印象の谷垣氏だが、昔ながらの自民党のまま政権復帰を目指すのであれば、幻想に過ぎない。地方票で3分の2を得られなかったことは、党改革の姿勢への疑問の反映だ。与党時代の党の政策を一から再点検し、民主党との対立軸の構築に努めなければならない。

 党再生をかけた総裁選のはずが、鳩山政権が脚光を浴びる中、すっかり埋没した。野党に転じた事情もあるが、惨敗を真剣に総括する過程が決定的に不 足していた。中堅議員の多くが出馬を見送り、候補の顔ぶれも国民的関心を呼ばなかった。地方組織も含め盛り上がりに欠けた様子は、党の前途の厳しさを物 語った。

 結局、河野太郎元副法相、西村康稔前外務政務官も含む3候補の主張から浮かんだのは、敗因総括をめぐる党内論議の混迷だった。小泉構造改革見直し に軸足を置く谷垣氏に対し、河野氏はむしろ改革継続を強調、派閥主導の古い体質を糾弾し、世代交代を前面に掲げた。議員票、地方票を通じての谷垣氏の勝利 は、小泉改革の負の部分が党内に強く意識されていることの反映だろう。

 とはいえ、新総裁や党の前途には不安を感じざるを得ない。まず、問われるのは民主党への対立軸の構築だ。谷垣氏は「小さな政府」の見直しを主張す るが、一方で新政権の政策をばらまきと批判する。構造改革のどの部分を改め、どこを維持するのか。消費税問題の扱いも含めて詰めなければ、いつまでも抽象 的なマニフェストしか作れまい。

 政策的にリベラルと目される谷垣氏には鳩山政権との違いが見えにくい、との指摘もある。国会での対応など、協力すべきは協力しつつ政策の違いを示す努力が必要だ。

 党改革をどこまで実行できるかも疑問符がつく。今回、谷垣氏を推す勢力の中心となったのは派閥を肯定し、世代交代など急速な変化を好まない勢力だった。

 持論である「みんなでやろうぜ」の挙党体制の構築も、党改革を怠る口実となりかねない。派閥や長老の顔色をうかがうようでは国民から早々に見放されよう。来夏の参院選の候補選定も、前例にとらわれない大胆さが必要だ。

 地味なイメージの新総裁だが、今回、選挙の顔となる人気者探しに党が踊らなかったのは、ささやかな前進でもある。とはいえ、無難さに走り、リーダーシップを欠くようでは到底、乗り切れない。谷垣氏も、変わらなければならない。

毎日新聞 2009年9月29日 0時07分




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